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23.キミと甘いバースデー 2
誕生日の前日は早く帰ってきて日付が変わるときから一緒にいる。
それが二人で暮らし始めてからの誕生日恒例の過ごし方だった。
修平の誕生日にはバイトも入れてないし、プレゼントも用意した。あとはケーキを買って帰れば完璧だ。
その日はミスとかはなかったけど、多分1日中そわそわしていたんじゃないかと思う。
そして待ちに待ったあがりの時間になると、マスターがにっこり微笑んだ。
「時間だからあがっていいよ。ご苦労様」
「お先に失礼します」
更衣室で手早くエプロンを外していると、同じくあがりの航が更衣室に入ってくる。
「なぁ、千秋。これから飯食いに行かね?」
「悪い、今日は早く帰らないと」
バタバタと帰り支度をしている俺を見て航が首を傾げた。
「なんか用事か?」
「まぁな」
「そっか、じゃあまたな」
「おつかれー」
そう言って荷物を持つと手を振っている航に軽く手を挙げて応え、早々と店を後にする。
そして帰りにお気に入りのケーキ屋に寄ってホールケーキを買ってロウソクを20本入れてもらい部屋へと急いだ。
帰るとまだ修平は帰ってきていなかった。
とりあえず明日の主役を飾るケーキは冷蔵庫の中に入れといてテレビを見ながら修平の帰りを待つ。
しばらくすると玄関のカギが開く音がしたので、出迎えに行くと……。
「ただいまー」
「おかえ、り……って、なにソレ」
修平は何故か大きな紙袋を抱えて帰ってきた。
「いや、何でもない」
そうは言うけど紙袋からチラッと見えたのはピンク色の可愛くラッピングされたもの。おそらく誕生日プレゼントだろう。
「もしかして誕生日プレゼント貰ったのか?」
すると修平は少し視線を外すとばつが悪そうに頷いた。
「……うん。恋人がいるからこういうのは困るって言ったんだけど無理やり」
「ふーん」
「ごめんね。断るべきだったよね」
修平が申し訳なさそうに言うから、「別にプレゼントくらいいいんじゃね?」って、つい強がってそう言ったけど……。
プレゼントを貰ってくること自体は別にいいんだ。ただ……。
……くそぅ! 女子中高生たちめ。
お前ら、俺より先にプレゼント渡すなんていい度胸してるじゃねぇか。
ヤキモチ妬かずにいてやってんだから、おまえ等ももう少し空気読め! と言ってやりたい。
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