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23.キミと甘いバースデー 9

───… 風呂から上がってくると小気味よい包丁の音が聞こえていた。 夕飯にしては遅すぎる時間になってしまったが、腹はいつも以上に減っているので修平の作る晩飯が楽しみで仕方ない。 「風呂上がったぞ」 「じゃあ、テレビでも見てなよ」 そう言われたけど、修平のそばで修平が料理するところを見ていた。 「手伝うことあるか?」 修平はにっこり笑うとかぶりを振る。 「あとは煮込むだけだから、ちょっと見てて。僕もシャワー浴びてくる」 そう言って修平がシャワーを浴びにいったので言われたとおりに鍋をみていた。 こんな風に短時間でぱぱっと作れてしまう修平ってやっぱり凄いと思う。 弱火にかけられた鍋はコトコトと音を立てながら美味しそうな匂いを放っていた。 ぐーっと腹がなって少し恥ずかしいけど、美味そうなもんをみて腹が減らないわけがない。 しばらくすると修平が風呂から上がってきて、鍋の中を確認すると出来たみたいだから食べることにした。 ───… それから最近あったこととか、バイトの話やテレビの話とかいろいろしながらゆっくりと食事をして、片付けが終わるころには日付が変わろうとしていた。 「あ、もうすぐ日付変わるぞ」 俺は冷蔵庫の中から買ってきていたケーキを出してきて、テーブルの上に置く。 そしてローソクを20本立てようとしたら修平がクスクスと笑っていた。 「なんで笑ってるんだよ」 「だって20本も立てたらローソクだらけだなと思って」 「でも、ハタチなんだから20本立てないと」 「そうだね」 俺は笑われながらケーキをローソクだらけにして卓上の電波時計をその横に置く。 そしてよい頃合で火をつけると、時計が0時になったと同時に修平のほうに向いた。 「誕生日おめでとう」 すると修平が嬉しそうな顔をして「ありがとう」と言った。 そして修平がローソクの火を吹き消したとき、修平の幸せを心の中で願ったんだ。 また来年も再来年もこの先もずっと修平の幸せの側にいられるように……って、こんなこと面と向かって本人には言えないけど、そのぶん心の中で願った。

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