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24.キスして酔わせて 7
───…それからしばらくしてほろ酔い状態になってきた2人。
「へぇ、修平くんって塾講師のバイトと家庭教師を掛け持ちしてんの!? やっぱ秀才は違うなぁ」
航は打ち解けた様子で修平にいろんなことを聞いている。
修平も少し酔っているのか、自分のことなんて滅多に話さないくせに航に聞かれたことに答えているし、酒のことはよくわからないけど2人とも既に何缶かあけいるので俺よりは強いことは間違いない。
それにしても航は特に楽しそうだ。
ジュースなので面白くもなんともない俺は不貞腐れながら、ほんの数ヶ月前にハタチになった航と今日ハタチになたばかりの修平の会話を聞いていた。
「へー。修平くん兄弟は?」
「姉が1人」
「姉ー!? 修平くんの姉だったら美人なんじゃないのか!? どうなんだよ! 千秋は会ったことあるのか!?」
するといきなりテンション高い航に話をふられてちょっと驚いてしまう。
「び、美人だよ。修平と似てる」
姉弟だから当たり前だけどと付け加えると、へえーと頷いた航は何故か修平の前で手を合わせた。
「姉ちゃん紹介してもらうこと出来ない? ってもそんだけ美人なら彼氏とかいるよな……」
「あぁ、来年結婚するって」
「そっか……そうだよなー」
航はわかりやすくがっくり肩を落とすと、すぐに復活して今度は俺の方を見てきた。
「だったら千秋の妹がまだ彼氏がいなかったらさ、オレが候補ってどう!?」
「な、なんで! 咲良にお前なんか!」
「だってよく見ると千秋って結構可愛い顔してるし。妹似てるってこないだ言ってたじゃん」
ニヤニヤ笑う航に心底ムカついてくる。
「なにが可愛いだ! 眼科に行きやがれ! つか、妹は絶対に紹介しないからなっ!」
俺がそう言うと航はケラケラと笑って、またチューハイを口に含んだ。
するとその様子を見ていた修平が口を開く。
「航くんって、彼女がほしいの?」
「うん。彼女ほしい」
「じゃあ、紹介してあげようか?」
予想だにしない修平の提案に、俺は耳を疑った。
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