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25.念ずれば福を呼ぶ⁉︎ 4
バイトに向かうと航は既に働いていた。
「おー千秋。昨日はありがとうな」
「おう」
そう言って下げられたカップを渡されたので片付けていると、あれからすっかり忘れていた藤原さんの存在を思い出す。
しまった! 修平に藤原さんのことを聞くの忘れてた。
聞いたところでどうなる話でもないけど気になることは解決しておきたいし……でも、なんて聞いたらいいんだろう……。と、考えているとタイミングよく航が洗い場にやってきた。
そうだ! 航は昨日、藤原さんに会ったはずなんだから航に聞けばいいんじゃね!!
そう思った俺はカップを洗い終え、今度はボールを片付けながらさり気なく聞いてみることにした。
「なぁ、昨日は藤原さんに会えたのか?」
「会えたよ。修平くんによろしく言っといてくれ」
「おう。で、どんな子だった!?」
「さっぱりした面白い子」
「お、面白い? え、お前ざっくりしすぎなんだけど。もっと他にあるだろ! 芸能人で言うと誰とか、背が高いとか低いとか」
航の説明では全くといっていいほどに藤原さんという人が掴めない。すると航は暫く考えていた。
「うーん、芸能人で似てる人は思いつかないけど。小柄で目が大きくて色白の和美人」
え、和美人⁉︎ 和風っぽい美人ってどんなだ⁉︎
やっぱり航の説明はわかりにくいんだけど、俺はそのまま話を続けることにした。
「……で、話は弾んだのかよ?」
「まぁな、藤原さんもSF好きらしいぞ。しかも俺らが好きなシリーズと一緒! で、昨日は何人が好きなのかって話になってな、めっちゃ盛り上がった!」
え、和美人藤原さんとやらもSF好きなのか。なんだよ、和風なのにSF好きってもうわけわかんねぇよ!
「よかったじゃん。これで、語り合える仲間が出来てさ」
もう全く掴めない藤原さんのことを考えていると疲れてしまって、吐き捨てるように言うと航が俺の肩を組んできた。
「なんだよ! オレに新たなSF仲間が出来たから妬いてんの? 千秋とも語り合うつもりだぞ、オレは!」
「妬く!? はぁ! バカかお前は!! 藤原さんと仲良くしやがれ!」
「だから妬くなって。お前みたいなのをツンデレって言うんだろうな。デレてみせろよ」
「うっせーぞ!!」
まったく。こいつは!
藤原さんについてわかったことといえばSF好きのさっぱりした面白い(らしい)和風美人……って、全然わかんねぇじゃん!!
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