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25.念ずれば福を呼ぶ⁉︎ 5

「航が言うその和美人ってのがよくわからない」 「藤原さんってすごく綺麗な黒髪なんだ。ぱっつん前髪でストレートロングって日本人形みたいじゃん。そういう意味」 「お前ってつくづく感覚で生きてるよな」 「褒められて嬉しい」 「褒めてねぇよ!」 「お! また出たツンデレのデレなし!」 「さっきから、それうるせー!」 どこまでもポジティブな航に呆れながら洗い場に持っていくステンレスのボールを重ねる。 あ……でも、待てよ。 別に俺が藤原さんのことを知る必要ってなくね? 藤原さんについて敵情視察みたいなことを勝手にしてきたけど、よくよく考えたらこのまま航と藤原さんが付き合ってしまえばいい話じゃないか。 そうだ! そうなればもう考える必要ねぇじゃん。 これからは航と藤原さんが付き合うように仕向けていけばいいんだと思うと少しほっとして今度は楽しむ余裕すら生まれてきた。 だから、よーし、お前ら早く付き合っちまえ! と、言おうと思って航の方を向いたとき、航が何気ない話をするかのようにボソッと呟いた。 「修平くんの前では千秋もデレたりすんの?」 「……………………え?」 それはどういう意味で? 何も言えずに固まったまま航の顔を見ると、航はそんな俺を気にする様子もなく話を続けたんだ。 「千秋ってさ、修平くんと付き合ってんの?」 男同士で付き合ってるって世間体もあるから表沙汰にしにくい話だろ? だから、たぶんここでさ、気の利いたこととか言えたらよかったんだと思うんだ。 きっと修平だったら上手くかわせたんじゃないかと思うけど……俺は…………。 ガシャガシャガシャーン!! 明らかに動揺して、持っていたステンレス制のボールを全部落としてしまった。 それは調理場だけでなく店中に金属音を響かせる。 するとカウンターにいたマスターが慌ててバックヤードに顔を出した。 「ち、千秋くんどうしたの!!」 「手が滑って……すいません」 「怪我がなければいいけど」 「大丈夫です。すいません、すぐに片付けます」 すると航が「オレも手伝いますから」そう言って散らばったボールを集めて洗い場に持って行った。

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