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25.念ずれば福を呼ぶ⁉︎ 6

マスターが店の方に戻っていくと、洗い場はしんとしていた。ただ水が流れる音だけが響くその空気が重くて俺は何も言わずにボールを洗い続けていた。 そして無言で洗い続けていると航が俺の顔を見てクスクス笑う。 「分かり易すぎ」 「なんで……い、いや、なんでもない」 なんでわかったのか? って聞きそうになったんだが、それじゃ認めるみたいになるから言葉を飲み込むと、航が俺の顔を覗き込んだ。 「なんでわかったかって聞きたいんだろ? それは付き合ってるって認めたということでいいよな?」 「なっ……!! そもそも、お……俺としゅ、しゅ、修平はと、と、友達だ!」 「だから分かり易すぎ。顔に出てる。大丈夫、オレ口堅いから」 ちょっと待ってくれ。 いろんなことがいっぺんに起こったみたいで混乱して頭が上手く働かない。 口が堅いって普通にしてるけど、こいつ偏見とか無いのか? そうやって様子を伺っていると航がまたクスクス笑う。 「なんだよ! 何が可笑しいんだ! 馬鹿にするなよクソ野郎」 「いや、今日は千秋がやけにツンツンしてるから面白くて」 「…………」 俺が黙っていると航がボールの泡を流しながら話し始めた。 「最初に言っとく。千秋はどう受け取るかわかんねぇけど、オレは“あぁ、こんな人もいるのか”って思った」 「こんな人って俺みたいなのか? ……つか、もういいや。なんで分かったんだ!」 もうどうしようもないし、どうにでもなれって感じで開き直ると、今度は何故わかったのかがそっちの方が気になりだしてしまう。 今まで誰にもバレたことなかったんだ。 高校の時に長い時間一緒にいた内川にも、腐女子である塚本でさえ気付くことはなかったのに、まだ出会って日が浅い航が気付いたなんて。 すると航は得意気に笑いながら話し始めた。 「一昨日までしてなかった指輪してると思ったら修平くんも同じのしてるし、誕生日を祝うって言ってたろ? 二十歳にもなって男2人って普通は無いだろ。それに、千秋のココ」 そういうと航は自分の首を指差した。 「ココ? 首がどうかしたのか?」 何のことを言ってるのかわからなくてきょとんとした顔をしていると、航の顔がゆっくりと近づいてきた。

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