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25.念ずれば福を呼ぶ⁉︎ 7
そして航は内緒話でもするかのように小声で続けた。
「一昨日までなかったのに、昨日の昼にはあったわけだから……ん? って思ってだな。で、昨日からまた増えてるから……確信したというか……」
「だから何が?」
俺がそう言うと航はなぜか目を丸くした。
「もしかして……気付いてなかったのか?」
「だから何が!?」
若干イライラしながら聞き返すと、急に航が頬を赤らめてまた小声で言う。
それもすごくこっそりと、ちょっと恥ずかしそうにしながら俺に耳打ちした。
「キスマーク」
「──は⁉︎」
「……あとは雰囲気とかだな。修平くん、オレのことかなり警戒してたみたいだし」
キ、キ、キスマーク……!?
そう思って慌ててトイレの鏡で確認すると首筋にくっきりと跡が残っていた。しかも複数!
修平いつの間に!! あいつ、コノヤロウ!
これをバイトに来て今までおっ広げて仕事してたかと思うと恥ずかしくて堪らなくなる。かろうじてボタンを留めたら隠れる部分だったので、シャツのボタンを留めてから洗い場に戻ったのだが、航の顔がまともに見れないでいると航はバシバシと俺の背中を叩きながら笑っていた。
「まぁ! 気にすんな!」
「いや、気にするし」
明らかにテンションが下がっている俺をみて、航は更に明るく声を掛けた。
「ま、あれだ! たぶん千秋じゃなかったらキモイとか思ったかもしれないけどさ、お前らには偏見とか全然浮かばなかったし、これからも友達な!」
恥ずかしいやらやるせないやらで落ち気味だったけど、バシバシと笑いながら背中を叩いてくる航を見て、なんか俺も笑えてきてしまった。
そういう風に言ってくれた航には正直ありがたいと思う。
やっぱり同性の付き合いっていうのは何かと大っぴらには出来ないものだし、修平と俺の関係を誰かに明かしたことはお互いに無い。
修平とはいつまでも一緒にいたいと思ってるし、何やかんやで2回も結婚してって言ってしまってるけど俺たちが生きていく形っていうのはまだ良くわからないっていうのが現状だったから。
よくよく考えなくとも、とても難しくてデリケートな問題なんだ。
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