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25.念ずれば福を呼ぶ⁉︎ 9

────── ───… 「なぁ、修平。お前、本当に指輪左手にしていくつもりか⁉︎」 「うん。千秋が左にしろって言ったよね?」 「それは酔っ払った時の俺で、俺じゃない!」 「どっちも千秋なんだからいいじゃん。それに僕が売約済みだって知らしめるんだろ?」 次の日。 今日から2人とも大学が始まるんだけど、修平が指輪を左手の薬指にしていくと言って聞かないから朝からちょっとした口論になった。 「せめて右手にしていけ! 本来は右のつもりで買ったんだから」 「でも、本心は左手が良かったんでしょう? 女子中高生たちに牽制できるよ?」 「うっせー! そんなことしなくていいんだよ!」 「じゃあ千秋はさ、僕がほかの子に取られてもいいの?」 「いいわけない!! ……あっ」 口論になっていた勢いで思わず叫んでしまったけど、また言わなくていいことを言ってしまった。 「修平卑怯だぞ!」 すると修平はクスクス笑いながら俺の右手を取り、薬指の指輪をなぞるようにして手を握る。 「僕は左、千秋は右。それでいいじゃない。なんか鏡みたいでさ。それに千秋、鏡好きだろ?」 「はぁ? なにそれ」 「だって僕が顔洗ってるときとか、洗面所にいるときよく見てるから」 「え⁉︎」 そんなことを修平が言いだすものだから、まさかこっそり修平のネックレスが鏡に映るところを盗み見てるのがバレたのかと思ってびっくりして、思わず口調もきつくなってしまった。 「み、見てねぇし!」 「そうなの? 鏡ごしに見るの好きなのかと思った。鏡ごしに見るとなんかいつもと違って見えない?」 「い、一緒だし!」 「そう? まぁ、とにかく僕は左手に指輪するからね」 俺が眉をひそめているにも関わらず、修平は嬉しそうな顔をして部屋を後にした。 さっきのは少し焦った。あのネックレスの秘密が修平にバレてしまったかと思ったからだ。 初めてあげた誕生日プレゼントのネックレスを修平は今も肌身離さず付けてくれている。 そのネックレスには三日月のモチーフが付いていて、そのモチーフの意味は俺だけが知ってることだから、たまに鏡ごしに見てはこっそり楽しんでいたんだけど……。 あまり見過ぎでもバレ兼ねないから今度からはもっと注意しなければ、と思いながら俺は大学に行く支度を始めた。

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