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25.念ずれば福を呼ぶ⁉︎ 10
結局は修平は左手に、俺は右手に指輪をするということで押し切られた俺は、修平とはマンションの前でわかれて自転車にまたがり大学に向かう。
大学の駐輪場に自転車を停めて指輪を眺めながら歩いていると、後ろから大学の友達に声をかけられた。
「柏木~久しぶり! あれ? 指輪!?」
振り返ると同じ講義を受けている友達にいきなり後ろから覗き込まれていて、その視線は俺の右手を見ている。
「ぬぉぉ!! なんだよ、後ろから!!」
「柏木ってさ、彼女いたの? それとも夏休み中に出来たの?」
「……え、高校のときから付き合ってる」
「まじか! 知らなかった! そういうことは早く言えよ。可愛い?」
「……かっこ…」
思わず何も考えずにカッコイイと言いそうになってしまったけど、彼女だと思っているやつにカッコイイって変だよな。
「かっこ……?」
「かっこ……いい系の美人」
「へぇ、意外!! お前が美人と!! 柏木が美人と‼︎」
「うるさいなー」
苦し紛れの言い換えではあったけど、美人ってのも間違いではないと思う。修平、顔きれいだし。
そんなこんなで、また慌しい学生生活が再開されたのだった。
講義中など、ふとした瞬間に右手の指輪が視界に入ると、むず痒いような気持ちになる。
修平には絶対に言わないけど、本当は修平が左手に指輪をしたまま出掛けるって言ってくれたとき、ちょっと嬉しかったんだ。
何も考えずに二十歳の特別な誕生日プレゼントといえば指輪だと思ってプレゼントしたけど、今、修平も同じ指輪をつけて講義を受けてるんだろうなって思ったらなんか繋がっているような気がするというか……。
それって、なんか気分良いなって思って。単純かもしれないけど。
すると、隣の席で講義を受けていた友達に小突かれた。
「なに、指輪眺めてニヤニヤしてんだよ」
「なんだよ! いいだろ別に!!」
そんな俺の謎のご機嫌は大学だけでなく、バイト中も続いていた。
今日はなんかいつもより気分も良くて、常連さんのお客さんと大学のことを喋ったり楽しく接客していた。
なんか良いことありそうな予感。って、ただ浮かれているだけなんだけど。
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