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25.念ずれば福を呼ぶ⁉︎ 11
バイト時間も残り少なくなってきたとき、マスターがカフェラテを2つお客さんに運ぶように言った。
「千秋くん、これお客さんに」
そのカフェラテにはかわいいラテアートが施されている。
マスターのラテアートは人気があって、今日来てる女子大生っぽいお客さんも注文時にラテアートしてほしいと言ってたくらいそれ目当てで来るお客さんも少なくない。
最近の人気はアニメキャラシリーズだった。
「おまたせしました」
女子大生っぽい2人組は、目の前に置かれたカフェラテに釘付けになっている。
「きゃーカワイイ!! ユキちゃんのもカワイイね!」
「すごーいこんなのどうやって作るんだろう」
マスターのラテアートはかなり手が込んでいるのでいつもお客さんは大喜びなのだ。
尊敬するマスターのラテアートが褒められると、なんとなく俺もうれしくて上機嫌のまま。
「ごゆっくりどうぞ」
そう言って立ち去ろうとしたとき、その2人組の片方に呼び止められた。
「あ、あの……」
「はい。なにか」
「あ、あの……あのですね……」
追加の注文でもあるのかと思い振り返ると、なぜかその子は真っ赤になって俯いてしまった。
でも、ぎゅっと目を瞑って軽くかぶりを振ると意を決したかのようにまた俺の方を見る。
「あの……私たちよくこのお店に来てるんですけど……か、かしわぎ……さん…で名前合ってますよね?」
その子は俺の名札を確認しながら上目遣いでこっちを見ていた。
この人たちよく来てるのか……。
常連のおじさんたちはよく話してるから知ってるけど、あんまり女の子とは喋らなかったから覚えては無かったんだけど。
そうしているうちに、もう1人の子とも目配せしながら、またその子は恥ずかしそうにしていて、再びちらっと上目遣いで俺のことを見た。
ん?
んんん!?
この感じは……。まさか。
もしかして……これは、柏木 千秋! 初のコ・ク・ハ・クですか!?
今までそんなことなかったから考えたことなかったけど(塚本とのあれは完全な勘違いだった)。
遂にか! 遂に俺にも来るのか⁉︎
息を呑んで期待するなって方が無理な緊張感に、俺は目を瞬かせながらゆっくりと唾を飲み込んだ。
すると彼女は頬を赤く染めながらゆっくりと口を開いた。
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