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25.念ずれば福を呼ぶ⁉︎ 12
緊張した面持ちの彼女を見て俺も固唾を飲み見守っていると、俯いていた彼女が意を決したように顔を上げた。
そしてドキドキしながら彼女の言葉を待っていると……。
「……あの、この間入った人。なんて名前なんですか!?」
その言葉に少し固まる。
「……え? この間入った人?」
「そうです。あの背の高い……あ、今出てきた人!!」
その子が興奮して指差す先には、思ったとおりというか何というか……航がいたわけで。
……なんでだよっ!
俺っぽい雰囲気だったじゃん!(思い込みだったけど)
俺のことかもって思うじゃん!(思い込みだったけど)
でも、心のどこかでやっぱり航のことか……なんて思いながら、「あいつは佐々木です」と告げてその場を離れた。
そしてカウンターまで戻ってくると、その晴れない表情にマスターが不思議そうな顔をして聞いてくる。
「どうしたの? 千秋くん」
その声に航も俺のことを覗き込むようにして見てきた。
「あの、女子大生風の2人組に航の名前聞かれた。お前のこと気になるっぽい。名前なら名札見ればいいじゃん!」
俺が不満そうに言うと航はケラケラと笑いながら俺の肩をぽんと叩く。
「まだ、オレそんなにホールで接客してないしね。でも、あの子たちよく来る子じゃない?」
「何、知ってるの?」
「オレ意外と人の顔を覚えるのは得意な方なんだ。近くの大学通ってるのかなって思ってた」
ニカッと白い歯をみせて笑う航を見て、きっとお前の性格とか何も知らなかったら、ホストかよ! とか言ってただろうなって思った。
「すいません。お水ください」
するとさっきの女子大生風の子たちが手を挙げている。
「お前が行ってくれば喜ぶんじゃね?」
「千秋ー、拗ねるなって」
そう言って航は俺の頭をガシガシとしてからとびっきりの笑顔でお客さんのところへ水の入ったピッチャーを持って行った。
そして、なにやら楽しそうに話しているなと思っていたら、追加オーダーを取ってきた。
「……やっぱホストか!」
なんとなく面白くなくて呟くとマスターが横でクスクスと笑っていた。
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