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25.念ずれば福を呼ぶ⁉︎ 15

航の歯切れの悪い声が耳に届き、その単語を聞いてそれを理解した瞬間、みるみるうちに顔が熱くなっていくのがわかった。 「おまっ……」 大声を出しかけたとき、航が咄嗟に俺の口を塞いで止める。 「待て! 落ち着け!」 「落ち着いてなんかいられるか!」 「いや、待て。とりあえず落ち着けって!」 口を塞ぎにかかる航の手を振り払い思わず立ち上がると、今度は肩を押さえ込まれて座らされた。 「お前な、なんていうことを聞きやがるんだ」 「だから純粋な疑問なんだって。別にお前らの営みの話を聞きたいわけじゃねぇよ。プロセスの話だよ」 つか、プロセスって何だよ! そんなこと話せるわけないだろ!! でも、そういうこともあっさり聞いてしまうような軽い感じも航といったところで、悪気が全く感じられないのは多分、自分の知らない世界に興味津々で純粋に目を輝かせているだけだからだろう。 「何で言わなきゃいけないんだよ」 突っぱねても好奇心には勝てないようで、航は何度も何度も聞いてくる。 それはもうウザイくらいに、何度も何度も。 そのやり取りに根負けしてしまったのは俺の方だった。 「いいじゃん。ちょっとだけ教えてくれたって。男ってさ、女と違って穴がないじゃん?」 「あー!! うるさい!! 穴あるだろ!! ケツだよケツ!!」 「シッ、千秋声が大きい」 あまりにも航がしつこいので吐き捨てるように言い放ったわけだけど、意外とでかい声が出てしまった。 なんとなく小さくなって周りに俺らの話が聞こえていないのを確認すると、また航が身を乗り出してくる。 「で、女よりイイって本当か?」 「はぁ? 知らねぇよ!!」 「……知らないって、なんで?」 「入れたことねぇもん」 「……え? それってさぁ。どっちの意味?」 航の顔を見た瞬間、シマッタと思った。 俺も気が緩んでいたとしか思えない。 気が緩んでいたから、なんとなく流れで言ってしまった。 しかし、後悔したところでもう遅くて。 「いや、あの、えっと……あの……」 でも、それだけだったらなんてことないはずなのに、俺って本当にこういうときの切り返しが下手だと思うんだ。 この場合だって上手いこと切り返せていたら……。 ……童貞だっていうことも、受けってこともバレなかったはずのに。

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