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25.念ずれば福を呼ぶ⁉︎ 16
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それから俺は落ち着くまでに相当な時間を要した。
なんで俺は男同士で付き合っていることだけでなく、めちゃくちゃデリケートな部分まで航に晒さなくてはならなくなってしまったんだ。
最悪だ。まじで最悪だ。馬鹿だ。俺は馬鹿だ。
自分の対応力のなさを呪いたい。
はぁーっと大きなため息をつきながらちらっと航の方を見ると、航は変わらずにこやかに笑っていて、またため息が出た。
でもバレてしまったものは仕方ない話なわけで、もうこの話は終わりにしたいから航が何かを言おうとする前に口を挟む。
「……もう、何も言うなよ」
でもそんなことで止められるような航ではなく。
「いやーまさか、まさかだね」
「だから何も言うなって」
落ち込んでいる俺とは裏腹に航はいたって楽しそうに笑っていた。
「そう落ち込むなよ。雑誌で読んだことあるぜ、前立腺オナニーにハマってる人の実体験」
「どんな雑誌だよ! つか、気休めはよしてくれ」
「いや、そのときはピンと来なかったけど前立腺ってそんなにも気持ちいいの? ハマる? 自分でもスるわけ?」
たぶん、天真爛漫な爽やかな笑顔でこんな下ネタ言ってる航は良く言えば純粋、悪く言えばくそ馬鹿だ!
「お前、1回死ね」
「千秋こえー。人生はゲームみたいにリセットボタン無いから死んだら終わりなんだぞー。あははー」
俺はここに例のノートがあったら真っ先にお前の名前を書いてるだろう。迷うことなく真っ先に!
航は相変わらずケラケラと笑っていたが、しつこい航に結局俺はいろんなことを聞き出されてしまった。
……最悪すぎる。
「まぁ、いろいろ聞いといてなんだけど。相談したいこととかあったら何でも言えよな」
「お前には絶対に相談しない」
目も合わさずに言い放つと、またあっけらかんとして笑う声が耳に届いた。
「おいおい~。でも、お前たちの事情を知ってるオレがいると心強くない?」
「自分で言うなって」
「でもさー、どんなにうまく行ってるカップルにも悩みってあるもんじゃん。オレは惚気みたいな悩みでも聞くし、相談にものるけどね〜」
そう言われてふと考えた。確かに今までは何があっても自分の中でしか処理なんて出来ないし、誰かに相談なんて出来なかったわけだから。
確かに心強いっちゃ、心強いのかも……って。
でも、それをそのまま言うのは、むかつくからやめておこう。
調子に乗るに決まってるから。
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