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第26章 湯けむりで目隠し 1
そして、温泉旅行が楽しみでその日までは一気に過ぎていった。
──そして旅行当日。
俺たちが当てた宿泊券は、近場の温泉地の高級旅館に1泊2日で2食付きで泊まれるというもの。
そこまではもちろん自分たちで行かなくちゃいけないんだけど、こんな高級旅館はなかなか泊まれないだろうからめちゃくちゃ楽しみだ。
今日は東海林が車を出してくれることになり、1泊2日だからそんな大きくも無い荷物をもって修平と駅で待っていると、何やら1泊にしてはでか過ぎる荷物を持って航がやってきた。
「なんだその荷物は? 1泊だぞ?」
「うん、そうなんだけどね。いろいろ詰め込んでたらこうなった。あはは」
「何が入ってんだよ」
「えっとね、ゲームとかお菓子とか、あと話のネタになるようなもの」
「絶対いらないもんばっか」
「えー! でもお菓子は食べるだろ?」
いつものようにケラケラと笑うと航はあたりを見回した。
「あれ? ジョージくんは?」
「ジョージってなんだよ! 東海道だって!」
するとすかさず修平が「東海林ね」と静かに突っ込みを入れる。
そうしていると、後ろからクラクションの音がきこえてきた。
振り向くと黒のミニバンが停まっていて、中にはノンフレームの眼鏡をかけて睨みを利かせている(ように見える)東海林が乗っていた。
「東海林も来たし、行こうか」
そう言って修平が歩き出すと航が慌てた様子でついてくる。
「え? ジョージくんってあの人!? どう見ても純日本人じゃん。外国人じゃなかったの? つか、車で行くの?」
どうやらショウジをジョージと聞き間違えて勘違いしていた航は、東海林が外国人だと勝手に思い込んでいたようで一瞬驚いていたが車で行くと聞いて嬉しそうだった。
俺たちが車に近寄ると東海林が運転席から出てきて修平と喋っている。
「ありがとうな。車出してもらって」
「車2日使うって言ったら親に渋られたけどな、気にせず来た。荷物後ろに乗せるか?」
「あぁ、頼む」
修平が頷きながら言うと、トランクを開けてくれたので俺たちは荷物を積み込んだ。
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