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26.湯けむりで目隠し 8

か、か、か、間接キスって……小学生かっ! とは思いつつも修平が目の前で見せつけるように残りの温泉水を飲み干していくので、不覚にもドキッとしてしまう。そして修平は目を細めて微笑むと、耳元でそっと囁くように言ったんだ。 「温泉水千秋味」 「お前本当にバカだよな」 恥ずかしさを隠すように悪態つくと、修平はクスクス笑いながら俺の持っているカップを指差した。 「千秋も飲んで。キスしようよ」 「か、間接だろ。うっせーよ」 間接キスなんてどうってことない、って思っているはずなのに修平に見られてるとなんか緊張してしまってなかなか飲むことができない。 妙に修平の唇の感触とか思い出したりしちゃって……。 くそー、朝出発する前の玄関で散々キスしたっていうのになんでこうむず痒いんだろう。 「千秋、早く」 急かされながらカップを口元に近付け飲もうとすると、修平が俺のことをじっと見ていた。 その視線は熱くて、ただ交換した飲み物を飲むだけなのに、俺のドキドキはどんどん大きくなるばかりで……。 えーい、もうどうにでもなれ! と一気飲みするとまた修平がクスクスと笑いながら俺の顔を覗きこんでくる。 「美味しかった?」 優しく尋ねてくる修平に恥ずかしくてまた思わず眉をひそめた。 「だ、だから、普通の湯だよ!」 「もうつれないなぁ。僕は美味しかったよ」 ──千秋の唇みたいに軟らかくて。 だ・か・ら! 耳元で喋んな! また顔が熱くなっていると、写真を撮り終えた航と東海林が戻ってきた。 一瞬、航たちのことを少し忘れかけていたこともあって驚いてしまったけど、なんとか赤い顔を悟られないようにしながら次の目的地に向かうことに。 それから俺たちはガイドブックで見た温泉パンなんかを買いながら、伝統工芸品のお店を目指した。

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