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26.湯けむりで目隠し 9

この温泉街はその昔、将軍様に竹製の茶道の花器を献上していたとかでたくさんの竹細工職人がいたらしい。その歴史ある工房にはたくさんの竹製品が並んでいた。 結構良いお値段のする花器の他にも手提げ籠のような生活用品も並んでいて、価格もリーズナブルなものまで様々だった。そして、その中に可愛らしい竹細工の小物入れがあったので手に取ってみると、隣で同じようにその小物入れを航が手に取っていて。 そして思わず2人で顔を見合わせて笑ってしまう。 多分こいつも妹へのお土産にと思って選んだに違いない。 「航、お前もやっぱりか」 「おう、妹にお土産買ってやろうと思って。千秋もだろ?」 「うん。竹細工の小物入れ、これ可愛いって喜んでくれるよな」 「オレもそう思う!」 2人で小物入れを持ったままケラケラ笑っているとそこに修平がやってきた。 「咲良ちゃんへのお土産?」 「うん。そう! 可愛いだろ」 「咲良ちゃんきっと喜んでくれるよ」 そう言いながらにっこりと修平が笑うと、その後ろから東海林が覗き込んでくる。 「いまどき、竹細工貰って何が嬉しいんだよ。つか、それに何入れるんだよ?」 せっかく人が良い気分で買い物をしようとしているのに、横から水を差してきやがる東海林に眉をひそめながら睨みつける。 「お前には関係ないだろ! 小物入れなんだから小物を入れるんだよ!!」 「だからその小物って例えば何だよ? 具体的に言ってみろよ」 「そ、それは……」 「ほら見ろ。言えないんだろ」 「ち、ちがう! 今はたまたま思いつかなかっただけだし!」 「そういう中途半端なものが、一番貰って困るんだよ」 「なんだとー!!」 ムキになっていると航が横からまぁまぁと言って割り入ってきたかと思えば、東海林の目の前に竹細工のペン立てとスマホホルダーを差し出した。 「どっちが貰って嬉しいと思う?」 そう東海林に伺いをたてている姿を見て思いっきり航の背中を叩いた。 「なに、東海道に感化されてやがんだよ! この裏切り者が!」 「痛いよ、千秋」 すると東海林は東海林で冷ややかな目で航を見た。 「つか、それくらい自分で考えろよ」 「え! ジョージくん冷たい」 そんなこんなで俺は咲良に小物入れ、航は妹にペン立てを買って観光を続けた。

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