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26.湯けむりで目隠し 10

そうしているとチェックインの時間になったので、俺たちは旅館に戻ることにした。 すると、先ほどよりも出迎え方が豪華になっていて、女将さんらしき人と仲居さんたちが俺たちを出迎えてくれる。なんか、こんな風景ドラマで見たことあるけど実際にされると迫力が全然違う! 部屋まで案内される間も荷物は運んでくれるし、初めてのことだらけですごくワクワクした。 俺たちが通された部屋には、大きな窓があり下にはさっき散策した温泉街が広がっていて、目の前は開放的な山々が一望できる。 そこから見える景色は格別だった。 「めちゃくちゃいい眺めじゃん!」 「紅葉きれいだな!」 そう言って俺と航がはしゃいでいると仲居さんがお茶を入れながら。 「夜になると山の間から街の明りなども見えて、また違った景色が楽しめますよ」と教えてくれた。 そして4人で入れてもらったお茶を飲み、茶菓子を頬張りながらほっこりと過ごす。 紅葉を見ながらお茶とか、非日常的だし。とても癒された気がした。 しばらく休憩すると、俺たちは旅のメインである温泉に行くことに。 この旅館には大浴場が3つあるらしくそれぞれ違ったコンセプトの露天風呂があり、支度して露天風呂に向かった。 この温泉旅館の3つの露天風呂は、『(ひい)の湯』『(ふう)の湯』『(みい)の湯』となっていてそれぞれ違った雰囲気の露天風呂が自慢だそうだ。 まず向かった『一の湯』は純和風と言った岩風呂で、視界をさえぎるものがない自然の大パノラマが見渡せるつくりになっていた。 夜であっても照明は最低限になっているとかで、月明かりや夜景なんかを楽しむことも出来るらしい。 「千秋! 天井がスゲー」 そう言って航が指さす先を、湯につかりながら見上げて見ると金ぴかの格子天井が目に入ってきた。 「やっぱ老舗旅館は豪華だな」 「なんかくじ引きで当たったりしなかったら一生縁がない豪華さかも」 それくらいリッチな気分に浸りながら温泉を満喫する。 一の湯だけでもこれだけ豪華なんだから、残り2つの露天風呂も期待大だ。

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