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第5話 初めての朝

次の日の朝8時。目が覚めた。 なんだか体が重い。 何かが乗っている・・・。 目を開けた。 目の前に啓司の顔と体の上に啓司の腕が乗っている。 ”え?なんで??昨日床で寝るって言って床で寝てたよね?啓司” そう思いつつ、重い腕を持ち上げようと体を動かす。 「んーー。もう朝ーー?」 啓司が伸びをする。 「んーよく寝たー」 そう言いながら布団ごと抱きしめられた。 「く・苦しいぃぃ」 思わず手をばたつかせる。 「あ!ごめんごめん。和樹小さくて可愛いからなー」 そう言いながら力を緩めて布団に潜ってきた。そして、おでこにキスをしてきた。 「え?僕たち昨日一緒に寝てないよね?僕何かしちゃった?」 恐る恐る聞いて見る。 「んーーー何もしてないと思うけど?でも昨日寝てたら、和樹寝言言っててさー、なんか悲しい夢みてたみたいだったから・・・ごめん。気になって抱っこして寝てた」 「寝言・・?悲しんでたの?僕」 「うん、ほら涙の跡がついてる」 そう啓司は言うと僕の目尻を撫でる。何の夢を見ていたかは、ほとんど覚えていない。でもきっと昔よく見ていたあの夢だろうな・・・と想像はついた。 「そっか・・・ごめん。寝言うるさかった?」 「大丈夫。俺が抱っこしたら、安心したみたいでぐっすり寝てたっぽいから」 そう言われて、何だか無性に恥ずかしくなった。 「和樹も二十歳なんだなってちょっと安心した」 そう言って啓司がまた僕のおでこにキスをした。まだ会って間もないのに、こんなに落ち着くなんて思わなかった。心地が良い朝を久し振りに迎えた気がしていた。 「和樹、また俺と会ってくれる?」 そう啓司が聞いてきた。 「え?なんで?」 「俺、ゲイの友達っていなくってゲイバーも暫く行く気になれないし、和樹が嫌じゃなければまた一緒にご飯とかいけたらな・・・と思って・・・ダメですか?」 照れながら言っているのがわかる。 「いいよ!わかった!もう一緒の布団で寝てるし。知り合い以上でしょ?友達ね!」 「あ、じゃあ連絡先教えてください・・・」 のそのそと起き出して、自分の携帯を手に取っている。 「ライン?番号?」 「どっちも・・・」 和樹も自分の携帯を手に連絡先を交換した。 「和樹さんって学校卒業して就職?」 「もう!また敬語!」 「ごめん。和樹。平日は仕事?」 「僕、就職決まってない。でもアルバイトは多分来週から始まるかな」 「じゃあ俺は週末が休みだから週末ならいつでもいいし、平日も7時には仕事終わってるから空いてる時に気楽に連絡してきて。いつでもいいから。俺今、夜、暇なんで・・・」 「わかった。じゃあ、来週のバイトのシフトが決まり次第連絡する」 そんな約束をして、啓司は昼頃帰って行った。和樹はしばらくは退屈しなくてよさそうだと少し啓司と会うのが楽しみになっていた。

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