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第11話 撮影

4月の後半のアルバイトのシフトが出た。 和樹は言われた通り、エイジに休みの日を一通り伝える。言っていた、モデルの話はそのままいきていて、休みの日を知らせるよう催促されていたからだ。 一番近い休みは4日後の木曜だった。 その日にとりあえず約束をする。 当日の天気次第で、外での撮影なのか、室内なのか決めようと言うことになっている。撮影するのに、一つだけ持ってきて欲しいと言われたものがある。 BGMだ。 思い出の曲でも好きな曲でもなんでもいいから持ってこいと言われた。 とりあえず自分の携帯の中に好きな曲は全て入っている。それでいいだろうと準備をする。 啓司からメールが入った。 ”明日から10日間、海外出張に行ってくる。暫く日本いないけど、ちゃんとご飯食えよ!お土産買ってくる” 思い起こせば啓司は長期出張に行っている間に恋人に捨てられた男だ。一応返事を送った。 ”僕は10日後もあの部屋に住んでるから、帰ってきたらお土産持ってきて” すぐにショック!っていう顔文字が送られてきた。 それにGood Luckと返事を送った。 木曜の休みの日晴れていた。 エイジのイメージは山の中だったようで、車で2時間くらい行った山での撮影になった。4月だから新緑の季節になっていた。清々しい気候で久しぶりに遠出をした和樹には良い気分転換になった。 普段着で来いと言われたため、モデルといっても自然な感じの写真をいくつか撮った。途中でソフトクリームを売っていた。それを買って一緒に食べた。その時もエイジはカメラを構えては写真を撮っていた。もう一日中カメラを向けられたのだ。家に帰り着く頃には慣れていた。 そして、その撮影は次の休みも、その次の休みも続いた。 4回目の撮影の日、その日は大雨だった。 仕方がないから室内での撮影ということになった。 撮影はエイジの知り合いのホテルで行われた。ホテルといっても、和樹が知っているホテルとは違い高級ホテルだ。この日は少しパリッとした格好をしてきて欲しいと言われた。だから、シャツに細身のパンツで行った。気に入っている服も持ってこいと言われた。だから、赤いコートを持っていった。このコートは和樹が初めて買った高級なコートだった。 まずはホテルの部屋から外を眺めているシーン。ネクタイを外している仕草。ベッドに腰掛け髪の毛を触る仕草。シャツの前をはだけている後ろ姿。 いろんな写真を撮っていく。 赤いコートを着ている写真もホテルの部屋の入り口で撮った。風呂での写真撮影も行われた。もちろん裸になる。和樹は男娼をしていた時代を少し思い出していた。だが、エイジのあまりにも真剣な姿に水を差すことが出来ずにそのまま流れに流された。この部屋に入った時からBGMがなっている。そのBGMが少しバラードになった。 和樹は不思議な気持ちだった。男と二人でホテルにいて、自分は裸なのに、相手は服をきっちり着ている。こんな経験は和樹にはない。どうして良いのか戸惑った。 「和樹君、どうした?さっきからソワソワして」 エイジにバレた。 「なんだか落ち着かなくって」 「ああ、裸だからかい?気にするなという方が無理だろうけど、俺はまだ君を撮りたい。だからもう少し付き合ってくれ。湯船に湯を張ってリラックスしようか」 そう言いながら泡風呂にしている。泡風呂・・・和樹が好きなシチュエーションだった。 「さ、和樹君、泡風呂に入って。リラックスした顔を撮りたい」 そう言われるままに泡風呂に浸かる。 カメラのシャッターを切る音が浴室に響く。 「和樹、好きな人のこと考えて」 そう唐突に言われた。 「僕・・・好きな人・・・」 「いないのかい?」 そう聞かれて言葉が詰まる。 「いたけど、失恋したから・・・」 思わずそう言っていた。 「そうか・・・じゃあ、その人とのこと思い出して、目を閉じて、顔にシャワーをかけるよ」 そう言われて、目を閉じる。ぬるいシャワーが和樹の顔にかかる。絶え間なくシャターの音が聞こえている。 「和樹、綺麗だな。君は本当に綺麗だ」 そうエイジが言う。その声は”よし君”に似ている。 思わず和樹は口走っていた。 「もっと言って。もっと優しい言葉聞きたい・・・」 その言葉をきいてエイジのスイッチも入ったみたいだった。シャッターを押しながら褒めてくれる。15分ほど浴室で写真を撮った。その後はベッドのシーツに包まって撮影が続く。和樹はもうすっかり羞恥心なんか忘れて男娼をしていた時のように妖艶な顔になっていた。元々、演技をするのが好きだった。 男娼のときにもそれが受けていた。 「エイジ・・・もっと言って・・・」 思わずエイジの褒め言葉に返事をしてしまう。 エイジは夢中でシャッターを押し続けている。 エイジもすっかりこの妖艶な和樹の虜になっていた。まるでカメラ越しに目で犯している気分になった。カメラマンとしてこんなに興奮しているのも久しぶりだった。やはり和樹は狙った通りのモデルだった。自分の股間が反応しているのも気がついていた。興奮が止まらない。 和樹がそんな様子に気がついているのかはわからないが、もうさっきから和樹が身を捩ったり悶える度に体から目が離せない。この子は魔性だと気がついていた。 和樹がエイジの体に手を伸ばしてきた。 ここが線の引きどころだ。 エイジはそう思った。このままこの魔性の男の子に持っていかれるわけにはいかない。変なカメラマンのプライドがそう言った。 「和樹君、そろそろ終わりにしようか・・・」 その言葉で和樹も少し我に帰ったようだった。 「あ・・・・僕・・・・」 そうは言っても和樹の下半身も反応してしまっている。 和樹は縋るような顔でエイジの顔を見た。 「お願い・・・これ、辛い・・・」 そう言って自分の下半身をあらわにした。 そして、エイジのズボンのジッパーに手を伸ばす。 「和樹君・・・それは・・・」 そう言った時には遅かった。 和樹に握られていた。 「これだけどうにかしよ・・・」 その提案に乗ってしまった。 二人はその性的に興奮したものを握りしめ、男として興奮を収めるための処理を一緒にした。出すものを出して仕舞えば、一瞬で冷静になれる。 「エイジさん・・・ごめんなさい」 「いや、君が謝ることではないよ。君があまりに綺麗だったから。こっちこそごめん」 そう言って謝った。 二人は身なりを整えて、その部屋を後にした。

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