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第24話 和樹と啓司
啓司からラインが今日も入る。
”今日の昼3時に成田に着く。今晩和樹の家に行ってもいいか?”
それに返事をする
”うん、19時には帰ってるから。待ってる”
啓司は久しぶりに会える和樹にもう一度告白し直そうかと思っていた。
夜20時。啓司はまた薔薇の花を手に和樹の部屋の前に立っていた。今日はインターホンを鳴らすのに少し勇気がいった。意を決して押す。中からすぐに鍵が開いた。
「啓司いつまでも入ってこないから心配しちゃった」
和樹もドアの前で待っていたのだ。
「和樹、これ・・・」
そういってまた土産と薔薇の花束を差し出す。薔薇の匂いを1嗅ぎして和樹がうっとりしている。もらったお土産の入った袋を覗き込む。
「ん?あ!これ!美味しいやつ!!!タイに行ってたの?」
お土産はタイのレトルトフードでトムヤンクンをすぐ作れるスープの素だ。
「これ今作って食べる?それとも今度にする?」
「えっと・・今度にしよ」
啓司がそう答える。
「何飲む?お酒?お茶?」
「お酒がいいかな・・・」
「今日は白ワインしかないけどいい?」
そう言いながらワイングラスが二つ出てきた。
白ワインは冷えていて美味しそうだ。
「これ安いけど美味しいから〜」
今日の和樹は何となくテンションが高い気がする・・・。
「うん、じゃあ久しぶり・・」
そう言いながら乾杯をする。
「は〜これ冷えてて美味しい〜」
そういって和樹が笑ってる。前回会った時と雰囲気が違う。それに少しドギマギしてしまっていた。
「和樹、今日はいい事でもあった?」
恐る恐る啓司が聞いてみる。
「え?今日のいいこと?
今日のいいことは啓司に会えたことだよ?」
屈託のない笑顔で答えてくる。
啓司は恥ずかしくなった。
「最近、いいことばっかりで。姉のあやが無事出産したし、僕って幸せ者だなってやっと分かったし・・・啓司に会えたし」
「・・・そうだねお姉さんおめでとう・・・」
「ねえ啓司。前告白してくれたじゃない?あれってまだ生きてる・・?」
和樹が啓司の横に座り直して聞いてきた。啓司はドキッとしてしまう。
「え?も、もちろん!!
俺はいつでも和樹には本気だから!!」
「そっか・・・よかった。僕ね気が付いたんだ。啓司が一緒に寝てくれてた時、悪夢見てなかったって。何もしないのに一緒に寝てるだけで安心して寝れたのは啓司だけなんだよね・・・僕今まで孤独だって無意識に思ってたみたいで、一人になりたくない癖に結構一人を好んでた・・・みたいなところがあってね。
僕、血の繋がってる家族はもう誰もいないんだよ。でも義父も義姉もよくしてくれてるし、愛してくれてるってやっとわかって・・・ほんとバカだよね。僕に差し出してくれてるものに気がつかないままだったから・・・。啓司の事も傷つけたかもしれない・・・でももし、まだ僕のこと好きでいてくれるなら、僕は啓司に肝臓あげてもいいなって思ったの」
「え?肝臓?」
「ははは。そこだけ言ったら意味わかんないか」
「うん・・・」
「啓司、僕のこと、本当のこと知ったら傷つくかもしれないよ。それでもいいの?」
「いいよ。過去のことだろ?俺は今から先の人生を和樹と一緒にいたいって思ってるから。その過去も含めて和樹だろ?俺だって、大概な恋愛してきてるし・・・そもそもお前と出会ったのだって散々なもんだし・・・」
「そっか、じゃあ啓司、僕の体抱いてくれない?僕、啓司のものになりたいの。だから抱いて」
「え・・・?本当に・・?本当に本気でいいの?」
「うん。もう啓司しかいらない。啓司意外に興味ないの。だから・・・ねえ」
そこまで言われた時にはもう啓司は和樹をベッドに押し倒していた。
「後でやっぱりって言っても無理だぞ。本気で抱くぞ・・・」
「うん、早く抱いて」
部屋の中はまた薔薇の匂いでいっぱいになっていた。
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