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化け物1
「え、マジでアイツ高校生?しかも16才?ホンモノのガキじゃないか。ヤバい。僕、危うく殺しちゃうとこだったよ。女、子供は出来るだけ殺まさないって決めてるのに、ヤバいヤバい、しかも・・・ガキを抱いちゃったわけ、僕」
声が聞こえる。
「いや、どうせなら殺してくれていた方がまだ、面倒がなかったんだけどな。どうするつもりだ、あの子」
ため息混じりの声。
「僕専用の穴にする。いつでも好きな時に僕がセックス出来るだけように」
あの男の声だ。
「彼を殺さないってことはどういうことか分かってるのか?」
「あんた達は嫌だろうね。でも、大丈夫。この右手は僕だけの性質だ。あのガキにはこれはない。つまり、あんたらでも殺せる。安全だろ?」
「そういう問題じゃない。監視対象が増えるのは・・・」
「コイツはずっと僕の側に置くし、僕以外とセックスさせるつもりはないから、監視するなら僕だけで十分」
男の声だ。
なんかいらだってる。
「あんたらの許可なんかいらないんだよ、あんたらに従う義理もないし。ただ、僕は取引の結果、あんたらの仕事をしているだけだし、あんたらの条件ものんでいるだけだ」
男の言葉に相手は黙った。
「上層部に伝える」
そうとだけ言った。
「そう」
どうでも良さそうに男は言った。
「確かに週に一度の殺人を認めてもらっているのは面倒がなくていいけど、でも、僕にだって充実したセックスライフが欲しいわけ。少なくとも、これからは殺しながらヤったり、殺してからヤったりはしなくてすむから、殺すだけになるから、その方が少しはあんた達の良心も楽になるんじゃないの」
男は言った。
「殺すのは止めないのか」
ため息混じりに相手は言った。
「それはそれなんだよ。でも、セックスはコイツだけでいい。当分。スゴく気に入っちゃた」
男は言っていた。
コイツってオレのこと?
「気に入られるのも気の毒だな、で、この子は分かっているのか、自分が化け物になったこと」
そこでオレは飛び起きた。
化け物ってどういうことだ!!
「あれ、目をさました?」
飛び起きた俺に男が笑いかけた。
男は俺が寝ているソファーのちかくにあるテーブルのところで誰かと話をしていた。
男の微笑は柔らかで、やはり、俺はドキドキした。
ホントに好みの顔なんだ。
寛いだジーンズにTシャツ姿が、またいい感じだった。
あんなに散々されてなんだけど、抱きたい。
そう思ってしまった。
いや、そんな場合では。
俺は真新しいパジャマを着せられていた。
「おはよう」
男は僕に近づき、呆然と立っている俺の頬に軽くキスした。
え、何、それ。
しかも軽く抱き締められてるけど。
何この恋人みたいなの。
「可愛かったよ」
耳元で囁かれて、微笑まれたりしているけど。
俺は頬が赤くなった。
思い出してしまったのだ。
色々されたこととか、色々俺が・・・。
いや、あれは俺じゃない。俺はおかしくなってたんだ。そうだ。
とにかく、
「俺が化け物ってどういうことだ?」
俺は男に尋ねた。
「化け物ってのには語弊があるな」
男はムスッとして言った。
「やはりなにも説明してないんだな」
男と話をしていたヤツがため息をつきながら言った。
スーツを着た男だった。
見事に何の特徴もない男だった。
一時間もしたら忘れてしまいそうな男だ。
「私が説明した方が良さそうだ」
スーツの言葉に男は不機嫌そうだったが、拒否はしなかった。
ただ、軽く俺の唇に唇を合わせて、離れ際、
「また、後で、な」
と妖しく囁いて、俺の身体を離し、部屋を出て行ってしまった。
何が後でなんだ?
後でどうするつもりだ、俺を。
俺は動揺した。
「とにかくこちらに座ってくれないか」
スーツが、俺が聞くだけでも、何度となくしているため息をつきながら言った。
俺は男が座っていた椅子に座る。
「結論から言おう。君は不死身になった」
いきなりとんでもないない言葉から始まった。
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