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化け物2
「彼は人間じゃないそれはわかるね?」
スーツに言われて俺は頷く。
右手が銃になったり刃物になったり。
人間の手はああならない。
「右手以外には、死なない、という特徴がある。彼らは死なない。そして、人間を殺すことを楽しむ」
スーツの言葉は意外だった。「彼ら」?
「私達は【捕食者】と呼んでいる」
スーツは言った。
突然、ごく一部の人間が【捕食者】に変わった。
男もそうだったと言う。
朝、目が覚めたら、自分が人間ではないことが分かっていたのだとか。
【捕食者】の共通の特徴は4つだけ。
捕食者は人を殺す。
どれくらいのペースでどれくらいの人間を殺すかは捕食者によるが、彼らは絶対に人を殺す。
「推測に過ぎないが、殺すことで何らかのエネルギーを得ている可能性はある。食事のようなものかもしれない」
ただし、と付け加えた。
「あの男は【捕食者】になる前から殺人鬼だったがね」
スーツの言葉に俺はどう答えれば良いのか分からなくて
「はぁ」
とだけ答えた。
2つ目。
捕食者は死なない。
「どうやっても死なない、色んなことが試されたが、死なない、文字通り、灰からでも再生する」
3つ目。
捕食者は捕食者でしか殺せない。
「私達は彼に協力を依頼した。おそらく我が国だけでなく、各国それぞれが捕食者の協力者を持っている、と思われる。公式には認められてはいないがね」
4つ目。
捕食者とセックスしたものは、【従属者】となる。
「大抵の捕食者はセックスに対する興味を失う、 と言うより、殺すことがセックスのようになるのだけど、興味を失わないモノがいる。あの男のようにね。それでも、大抵は本能の殺してしまうのだけど、万が一生き残った場合、【従属者】になる」
従属者は死なない。
ただ捕食者と違い、首を切り離せば死ぬ。
そして、従属者は、【捕食者】に操られる存在になる。
俺は納得した。
「そうか、だからか俺があんな風になるなんて、おかしいと・・・」
あの男の能力の仕業だと思えば、急に心が軽くなった。
「・・・気の毒だが、セックスをして24時間以後からだよ、支配が始まるのは」
スーツが無表情にいったので、俺は真っ赤になった。
じゃあ俺は、俺のあの痴態は。
操られていたことにして欲しい。
「それに彼には君をコントロールするつもりはないようだ。聞かれたんだろ?一応、彼の穴になるか死ぬかって」
男はさらりと言う。
俺は真っ赤になる。
「まぁ」
どう答えればいいんだ。
男は初めて面白そうな顔をした。
「気の毒だが、君は彼に従ってもらうしかない。彼はその気になれば君の意志なんか奪える 。でもそうしない位には君を気に入っているようだ、それはそれで気の毒だがね」
男はため息をつく。
男に従うってどういうこと?
「俺はどうなるのか?、家に帰れないのか?」
俺はやっと不安になった。
現実であることが分かってきた。
不死身になったとか、捕食者とか全然分からないけれど。
「君は彼が望んだ時にセックスの相手をする。それは君も納得して生き残ったのだろ」
男の言葉に俺は震えた。
確かに「専用の穴」になると言ったけれど。
「君が死ななかったことが良かったのかは分からない。それに君は【従属者】になったことで監視対象になった。【従属者】については詳しいことは分かっていないからね。逃亡すれば、我々に殺される」
俺は真っ青になった。
俺は昨日まで、ゲイであることを悩む、高校生で。
ただの高校生で。
「あまり脅したくはないが、彼がいつまで君を生かしておくかも分からないしね」
男は気の毒そうに言った。
そんな。
そんな。
「説明終わった?」
ふらりと男が帰ってきた。
座る俺を椅子の背から抱きしめる。
「早く帰れ」
俺の髪を指で弄りながら男はスーツに言った。
「・・・それでは、 君元気でな」
スーツは俺に言って、またため息をつきながら立ち上がった。
俺の名前を呼んだ。
「なんで、俺の名前・・・」
驚く俺にスーツは言った。
「それくらいはもう調べてある。どちらがいい?殺されたか、行方不明か。ご両親に伝えるには」
俺は絶句した。
俺、本当に帰れないんだ。
「・・・行方不明で」
俺は小さな声で言った。
殺されたよりは、いいかも知れない。
両親とはうまくいっていたわけじゃない。
でも、親で、俺の家で。
「・・・わかった」
スーツはそう答えて、立ち上がった。
書類鞄を抱えて、 部屋を出て行く。
僕に一瞬同情的な、目をしたような気がした。
スーツがいなくなった瞬間、男は我慢できなかったかのように唇を重ねてきた。
舌が俺の唇を割って入ってきて。
俺はただ、その舌の動きに翻弄される。
必死で舌を動かして応えるのが精一杯だ。
気持ちいい。
気持ちいい。
「ベッドに行こう」
俺は囁かれた。
あんだけヤられたはずなのに、俺もそれを拒否できなかった。
俺に拒否権などないのだろうけど。
俺はふらふらと立ち上がった。
立ち上がった俺を男は抱きしめる。
俺も 、男を抱きしめ返す。
ああ、この身体を抱きたい。
俺は男の背を腰を撫でる。
尻のライン、割れ目、ここを割開いて、そこに俺のモノを突き立てたい。
俺の息が荒くなる。
男が笑った。
「まだ、僕の穴を狙ってんの。面白いなぁお前」
背は同じ位だから、すぐそこに男の目がある。
つり目がちの目は、どうかしたら冷笑的になるけれど、今は柔らかな微笑を浮かべていて、俺はまたドキドキしてしまった。
「僕にあんなにヤられても、まだ僕をヤりたいんだ。本当に面白いなお前」
男はまた俺にキスした。
頭が真っ白になるようなキス。
俺は気が付けば、男に抱き留められなければ立ってられない位になっていた。
「こんなになってちゃ、まだ僕はヤれないな」
囁かれた。
なんだか、もう、ぼんやりしてて、男に抱えられるようにしてベッドに連れて行かれたことも、押し倒されたことも、夢見心地だった。
「さあ、楽しもうか、可愛いよ、お前」
男がペロリと舌なめずりしたのが見えて、ただ思った。
【捕食者】。
俺は喰われるんだと。
男の唇が首筋に落ちた。
そこを吸い上げながら、男は囁く。
「今度はベッドで優しく抱いてやるから。優しくしてやるから、優しくするから」
本当に指も唇も優しくて。
初めてされた時とは違う甘さに俺は、声を上げた。
「だから、家のことなんて、忘れちゃえよ」
そう囁く声が心細く聞こえたのは気のせいだろうか。
指や舌は優しく俺を貪った。
俺は声を上げて乱れた。
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