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殺人鬼11
犬がガキと話をしていた。
それが妙に、気に障った。
ガキが犬に笑っているのもなんだか面白くなかった。
お前は僕のモノだろ。
なんだか面白くない。
スゴイ機嫌が良かったのに面白くない。
犬が僕を見て言った。
「ターゲットの資料を持ってきた」
ファイルをテーブルに置く。
国の犬。
首輪をつけられた犬。
僕はこいつらは好きじゃない。
まあ、コイツは犬の中でも出来る犬だとは思っているがそれでも犬だ。
「分かった、さっさと帰れ」
僕はガキを背後から抱きしめた。
コレは僕の、だ。
犬の目の前で、ガキの顔をこちらに向けて、キスをする。
濃厚に舌を絡めて、貪る。
人の目の前でされることには慣れてないガキは、真っ赤になって僕を押し、身体を離そうとしていたが、気持ち良さに負けた。
犬の前でも、僕を欲しがるように応える。
犬が目を丸くしている。
コイツがこんな顔するのは珍しい。
唇を離せばガキはとろけた顔で僕にもたれかかる。
コレはコレで可愛いけれど、この顔を犬に見せるのも癪だった。
「見るな」
僕は自分の胸にガキの顔を押し付けて隠す。
「自分で見せつけといて」
犬がため息をついた。
コイツため息ばかりつくな。
「さっさと帰れ」
僕はガキの顔を胸に抱きしめながら言った。
「部下がね 、『男でも可愛くなってきた』って報告してきたよ。見せつけるのはそこそこにしておいてくれるかい」
犬がまたため息をつきながら、立ち上がった。
訓練所のグランドのアレか。自分で見せつけておいて何だけど、コイツの感じてる姿や 、イキ顔を見られたと思ったらムカついてきた。
「ソイツの眼球をえぐりとってやる」
僕は半分以上本気でいった。
「・・・怖いな」
またため息をつく。
「何の話?」
分かってないガキが俺の胸の中から尋ねる。
見られたと知ったらガキはまた気に病むだろうな。
「大した話じゃない」
僕。
「 どうでもいい話だ」
犬。
ほぼ同時に言った。
なんかますます気に入らない。
犬は肩をすくめて部屋を出て行った。
さて。
「 出かけるぞ」
僕の言葉に、抱きしめたガキの身体が固くなるのを感じた。
ガキを乗せて車で行く。
ガキは嫌とは言わないし、不機嫌そうな顔もしない。
でもそうしないのは僕が嫌がるからだってことは、僕だってわかる。
でも、助手席に座るガキは青ざめていて。
仕方ないので僕は車を止めた。
誰だって慣れる。
だから最初はこんなもんだってのも分かっているんだけれど。
道端に止めて、助手席のガキにキスする。
こんなことで機嫌が治るとは思わないけれど。
それでも、ガキが僕の舌に応えたことにホッする。
唇を離した。
ガキの目がトロンとている。
ガキは本当に簡単にとろける。
「そんなに嫌か。・・・いいよ、素直に答えても」
僕は怖がらせないように優しく囁く。
「人を殺すのは、嫌、だ」
怯えながらガキが言った。
震えながら。
僕が怖いか。
そうか。
「ごめんね、でも、コレは止められないんだよ」
僕は正直に言う。
優しく髪を撫でてやる。
ガキは無表情に頷いた。
分かっていたって顔だ。
「でも、悪者だったらどうだろ。殺すのが悪者だったらお前のその罪悪感みたいなの、減る?」
僕の提案に少しガキの表情が戻る。
「俺ね、趣味で殺すなら好みの外見と殺しやすい条件で選んできたんだけど、セックスはお前とするし、多少外見が好みじゃなくても良いかな、と思って」
なんで僕がここまでしなきゃいけないんだ。
でも、ガキの表情が戻っている。
「散々人を殺してる奴らを殺すなら、お前の気も楽になる?」
僕はガキの目を見た。
明らかな安堵。
人間ってのは不思議だ。
とんな人間を殺すかだけで、こんなに罪悪感が変わるのか。
通りすがりを殺すのか、罪人を殺すかで。
殺すことには変わりないのに。
「ありがとう」
ガキが遠慮がちに言った。
僕はガキ髪をクシャクシャにした。
まあ、いい。
コイツが楽になるなら。
僕は車を出した。
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