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殺人鬼13

 僕はチャンスを与えるのが好きだ。  希望に向かう人間が好きだから。  煌めきがある。  だからメガネ豚にもちゃんとチャンスをやった。  僕から逃げ切れば助けてやると。   真っ暗な闇。  山の中。  木の茂み。  隠れるところはあまりにも多く、しかも俺は500数える時間さえ与えた。  このメガネ豚は、そんなチャンスさえ自分が殺した奴らに与えちゃいないだろうに。  僕がコイツより上等だとは思っちゃいない。  だからといって、コイツをいたぶるのを止めようなんてさらさら思うわけがない。  自分だけは別だと思ってたサディストをいたぶることのは、好みの男を殺すのと同じ位楽しいからだ。   さあ、豚、逃げろ。  僕はあの豚に銃まで与えてやったのだ。  まあ、これは何の意味もない。  僕は銃では死なないからだ。  でも、男には希望になるだろう。  キラキラ輝く生への希望を握りしめ豚は走っているのだろう。  豚で醜いお友達なのに、きっとその希望だけは美しい。  僕はゆっくり数える。  ガキは車のボンネットに座って無表情に見学だ。  あの無表情が。   どうにも、腹立たしい。  豚のしてきたことを話したから、まあ、今ではそれほど嫌悪はないのは良かった。  薬と売春と、廃棄物として埋められる女達のよくある地獄の物語だ。  ホント、よくある話だが、ガキが豚に嫌悪を持つには十分だった。  今回はこれでいい。  それに、いつかは慣れるだろう。  殺人に。  「500」  僕は数え終わった。  さあ、探しに行こう。  僕は夜の山の中に入っていった。   待てばいいだけだ。  銃声がした。  暗闇の中で、恐怖に捕らわれた豚が銃を無闇やたらに撃つことを僕は予測していた。  さあ、場所はわかった。   僕はそこへ音もなく近寄った。  ここでは金もお前を守ってくれない。  お前の権力もお前を守ってくれない。  夜道に迷う子供と同じ生き物でしかない。  僕は豚の背後にしのびり、右手を変化させた刀で、その鼻を削いだ。  豚は鳴き声をあげた。  ああ、いい声だ。  でも、鼻が無くても逃げられるよね。  僕は期待する。   期待通り、豚はそれでも逃げた。  僕はゆっくり追う。  すぐに終わらせたら楽しくない。  木の根に足をとられ 、自分から転けたのは豚だった。  今度は耳を削ぐ。  うっとりするような豚の悲鳴。  期待する。  逃げろ。  走れ。  もがけ。  そして、豚は喚きながらそれでも、夜の山を走る。  それでも、走る。  僕は豚が少し好きになり始めていた。  この豚は希望を捨ててないのだ。    

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