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殺人鬼14
豚は素晴らしかった。
左の指を一本一本切り落としても、それでも逃げた。
わずかな希望を諦めず、逃げる姿は、僕に感銘を
与えた。
ろくに撃ち方もしらないだろう銃を握り、僕を睨みつけ銃を見事に当てさえした時は、感動したくらいだ。
「死ね!」
豚は見事な目で僕を見て引き金を引いた。
最初のびびった一発以外は 豚が銃を撃たなかった理由がわかった。
豚は確実に銃が当てる瞬間を待っていたのだ。
指を切り落とされながら。
ただの豚だと思ってたことを謝ろうと思ったほど感動した。
いや、ここまで頑張れるヤツはそうはいない。
僕は撃たれてやった。
痛み位、くれてやる。
男は迷いなく、弾を全て撃ちきった。
でも、ごめん。
僕、不死身なんだよね。
倒れた僕の姿を見て、歓喜に吠える豚が、僕はとても好きになっていた。
だから。
起き上がり、そんな僕を観て、豚が最後の望みを
失った目を見た時は残念だった。
光が消えて行く。
手を伸ばして捕まえても、もう、逃げない。
希望は流れ出していた。
「あんた、外見はともかく、結構いい男だったんだね」
僕は鼻も耳もない男の顔から残っていた唇を切り取り、目をえぐり出した。
顔などなくても、この男の価値は下がらない。
僕には倫理などわからないから、人の価値などその死に際でしか測れないけれど。
叫ぶ男の右手を斬り落とし、脚を切り落とした。
最後に首を斬り落とした。
ああ。
好みの男以外を殺すのはイマイチかと思ってた。
違った。
良かった。
これはこれですごいよかった。
豚はいい男だった。
男は外見じゃなかった。
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