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捕食者4
正直ホッとした。
俺も確かに不死身だけれど、入れられる側と入れる側では、体の負担が違うのだ、と叫びたい。
いつか、いつか、泣いて「もう、ムリ」って言っても 男をヤってやる。
俺は決意を新たにした。
男は携帯片手にまた不機嫌に戻ってた。
「ファイル?まだ見てない。だって今日は殺人とセックスの日だ。仕事しないよ。え、もう、次の日の10時?ああ、そうか、そうかよ」
何時間セックスしていたんだろ。
不死身ってことは恐ろしい。
人間だったら確実にヤり殺されるレベルだ。
俺はこのチャンスをのがさず、バスルームに駆け込んだ。
「あ、ガキ、逃げるな!お前のせいでガキがセックス拒否しただろう、ああ、もう、わかった。読んで夕方見に行くよ、とりあえず」
声が聞こえた。
相手はスーツだろう。
スーツはいい人だ。
無表情だけど。
「あの犬がいい人?」
男は嫌そうに運転しながら顔を歪めた。
犬っていうのはスーツのことだ。
俺は免許がないから助手席だ。
高級セダン。
国から支給されているそうだ。
「オマエとことん人を見る目がないな」
男は呆れたように言った。
「あいつは殺人鬼の扱いがしやすくなるなら、高校生を性奴隷として差し出す男だぞ。差し出されといて、オマエ何言ってんの?」
まあ、俺を性奴隷にしている殺人鬼が本にがそう言うのも、どうなんだろとも思うんだけど。
「そうかな、悪い人とは思えないけどなぁ」
男には言えないけど、スーツは俺に、約束してくれた。
もし、俺が耐えられなくなったらころしてくれると。
死ぬつもりはない、でも、いつかの出口があるかもしれないと思い生きるのは救いにはなる。
笑ってるし、俺は今、笑ってるし。
でも、出口があると思うだけで。
「・・・ああ言う男が好みか」
低い声で男が言った。
俺はスーツを思い浮かべる。
背が高くて、ゴツイ。
それ以外は何の特徴もない、忘れてしまうような顔。
「全く好みじゃない。俺は顔のいい男が好きだ」
この辺は断言できる。
男は笑った。
本当に楽しそうに。
「だから僕か」
「そう、だからアンタ」
俺も笑う。
「まあ、な。俺はビケだからね」
「それは否定しない」
俺達は笑いあった。
俺達は【捕食者】の下見に向かっていた。
その捕食者は従属者を持っていた。
そう、男と俺のように。
それがどういう意味なのか、俺はまだわかっていなかったのだ
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