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怪力惨殺6
目が覚めた。
そこはひどく殺風景な部屋だった。
ベッドしかない。
大きなベッドの上にボクは横たえられていた。
ボクはぼんやりしていた。
酷い夢を見ていたから。
引き裂かれながら、貪られ、手足を砕かれる夢だ。
ここはどこ。
ボクは起き上がった。
そしで、凍りついた。
ベッドの横に男が座っていたから。
巨大な男。
ボクを引き裂いた男。
ボクを殺した男。
男は目を閉じていた、床に座ったまま眠っているようだった。
ボクは自分の身体を見下ろした。
裸だった。
何も着ていない。
そして、傷は何もなかった。
風呂に入ったかのようにさっぱりしていた。
いや、髪が濡れていて、シャンプーの香りがしていた。
風呂に入った?
覚えがない。
あれは夢?
じゃあなぜこの部屋で、この男は?
ボクは混乱した。
男は昨日の悪夢の中とは違い、目を閉じていたから、外国の彫像のようだった。
そう、彫られたような造作の顔立ちは、目を閉じれば凶悪さはなく、昔の英雄の彫像のようだった。
昔の外国の映画のように伸びたままの髪が、その印象を強くした。
男が、濃い睫毛に囲まれたグレー目をゆっくりと開けた。
そしてボクを見て、驚愕した色をその目に浮かべた。
なので、ボクは昨日のことが夢ではなかったのだと知った。
この男はボクをなぶり殺しにしたのだ。
男の指がボクに向かって伸ばされた。
ボクは恐怖に後ずさった。
それでボクは手足は今はもう折れていないことを知る。
男の手が下ろされた。
男はただ、食い入るようにボクを見つめていた。
男はただ、黙ってベッドサイドのテーブルからメガネ をつかんだ。
ボクのメガネだ。
ボクへとそれを差し出した。
ボクは恐る恐る、それを受け取った。
メガネをかける。
え。
気持ち悪い。
メガネをかけたら視界が歪んだ。
えっ、ちょっと待って。
その前に、なんでボクはメガネをかける前からあんなにハッキリ見えていたんだろう。
メガネを必要としなくなっている?
メガネを外した。
見えた。
あれほど視力が悪かったのに。
折れていた手足が治っていること、視力が治っていること。
何かがボクの身体に起こっていることは確かだった。
男はその間もボクを食い入るように見ていた。
その目の中に、昨日と同じものを感じて、ボクは怯えた。
飢えだ。
欲望だ。
裸の身体を隠すものなどなく。
男は立ち上がり、ベッドに上がってきた。
巨大な身体が乗ればベッドが沈み込む。
ボクの身体に体重を載せないように、男がはボクの上に覆い被さった。
昨日とは違い、Tシャツとスウェットのズボンだけであるから、男の肉体が怖いほど良く分かった。
分厚い肉体。
筋肉の層が重なりあっていた。
人間の手足など簡単に引き裂いてしまう身体がそこにあった。
状況が違えば男の身体にみとれたかもしれない。
それは、圧倒的な存在感のある肉体だった。
ただ、今は恐怖でしかなかった。
男が息を荒げていた。
顔には何の表情もないが、グレーの瞳は色んな感情を垣間見せていた。
欲望、安堵、迷い?
男は唸った。
獲物を前に、「待て」をされた猟犬のように。
「嫌、だ」
ボクはつぶやいた。
男の手が、ボクの手からメガネを奪い、ベッドサイドに置いた。
理性的な行動だった。
でも、目が。
目は。
欲望にたぎっていた。
ボクは悲鳴をあげた。
男がボクの身体をひっくり返した。
男が自分の指をなめてから、ボクの後ろの穴にその太い指を差し込んだ。
ひい
ボクの喉がなる。
今度は慣らしてから入れるつもりらしいが、いきなり何本もそんな大きな指を入れられても、痛い、痛い。
遠慮なくただ闇雲にかき回され、ボクは呻く。
違和感と圧迫感。
それでも、そうされただけのことでも 、巨大な男のモノは二回目のせいか、入れられただけでは、身体が千切れることはなかった。
苦痛。
苦痛でしかない
男が言葉にならない叫びを上げながら、獣のように腰を打ちつけて始めた時には、やはりボクの身体は血を流し、ボクは悲鳴を上げ続けた。
でも、骨が折られることはなく、ボクも男も、ボクの身体がすぐに怪我が治る身体になったことを、その行為の中で気づくことになったのだ。
散々ボクをなぶり、男の気が済んだ後、男はボクの穴を確認した
そこは、もう傷ついていなかった。
何故か男が安堵した表情を浮かべていた。
もう動けないボクを風呂にいれたのも、綺麗にしたベッドに寝かせたのも男だった。
その日から、男にボクは抱かれ続けている。
朝男が出ていき、夜帰ってくる、そして、抱かれる。
その毎日だ。
何故か、逃げられない。
この部屋を出ることが出来ないのだ。
部屋を出て、外へのドアに手をかけることはできる。
でも、何故かドアを開けられないのだ。
男が食糧を買ってきたが、食べる気がしない。
男も何も食べない。
何日もその状態が続いて、やっと、ボクも男も理解した。
ボクは男のように、何も食べなくてもよい身体になったのだと言うこと。
男に酷くされても、すぐ回復する身体になったのだということ。
それは絶望だった。
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