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従属者1

 怪しいよな。  俺は思った。  めちゃくちゃ警戒されている。  あの人の趣味で外見を整えられた俺は、こういうタイプには警戒されるような外見だ。     金かけた遊び人だよ。これじゃ。  10代の格好じゃない。  彼は写真とは違いメガネはかけてなかった。  俺の膝のように治ったのだろう。  地味な服装、無造作なのびっぱなしの髪形。  それでもメガネに隠れていた繊細な顔立ちが、露わになり、彼はとても。  いい感じだった。  全然抱ける。  イける。  俺の趣味ではないけれど、コレはコレで。  そう、俺は冷たい冷笑的な、無理目の男が一番抱きたい。  マジ、あの人がどストライクだ。  でも、彼みたいな感じ全も然イケる。  ナチュラルな清潔感が、ちょっと泣かしたくなる感じで。  あの人に釘さされていたし、俺もどうのこうの言っても、一番抱きたいのはあの人だったから、手を出す気はないけれど、コレは可愛いな。  散々されてんだろう。  この細い身体にあの狂犬のデカいのをぶち込まれてんだろな。  めちゃくちゃされてんだろう。  俺もそうされているので間違いない。  よがる彼を想像してしまって、ちょっとヤバいことになりそうだった。  ダメだ。  ダメだ。  集中。  「・・・  君だよね」  俺は彼の名前を呼んだ。  彼が警戒する。    怯えるようにスケッチブックを抱える姿が、可愛い。  わあ、泣かせたくなる、コレ。  あの人に抱かれて良かったことは、ゲイであることに開き直れたことだな。  でも、元々ゲイの俺とは違って、彼はストレートだろうに。  気の毒に。  「君は誰?」  彼は尋ねる。  「・・・アンタを助けたいんだ 」  俺は言った。  立場的には同じ。  捕食者に飼われた性処理用の「穴」。  スーツもあの人も彼を殺すって言うけれど、彼は被害者だ。   殺されることなんかない。  「アンタは男に飼われてる。逃げたくないか?」  俺は彼の隣に座った。  彼の目が揺れた。  「あんたは自分では逃げられない。あの男に意志を縛られているから。だから俺が助けてやる」  俺は囁いた。  彼は心が揺らいでいて、すごく、儚げで、ほっとけなくて。  抱きたいと思ってしまった。  心の中で俺はあの人に言う。  セックス覚えたての16才が心の中ですることは許してくれてもいいだろう? 思うだけ!!  「少し話をしよう」  俺は言った。  「俺はある人の仕事を手伝っている。その人はあんたが今一緒にいるような男をどうにかするのが仕事だ」  俺の言葉に彼は目を泳がせ続ける。  「何を躊躇している?あんたは自分であの男の元に行ったのか?違うだろ?何された?殺されかけたんじゃないのか?あんたが生きているのはただ運が良かっただけだ」  俺はたたみかける。  「優しくされた?でも、あの男はあんたから何を奪った?男に抱かれる為だけに生きていくのか?」  言いながら、なんか自分にも、言った言葉が突き刺さっている。  「あんただってわかっている。あの男は殺人鬼だし、もう人間じゃない」    そう、あの人と一緒だ。  彼と狂犬は、俺とあの人に似ている。  「助けてやる。あんたはあの男に逆らえない。それは分かっている」  彼の指が震えていた。  瞳が震えていた。  ああクソ。  可愛い。  その手を握る。  これくらいは役得だ。  「俺に協力しろ。ここから先、専用の穴として、デカいの突っ込まれて喘ぐだけでいいのか。あんたの人生は?他にやりたいこともないのか?何より、いつまでもあの男があんたを特別に扱う根拠は?相手は人間じゃない」  俺達「従属者」もそうだけどな。  でもそれは言わなかった。  彼は何も言わなかったが、彼は協力するはずだ。  彼は俺と同じで人間の側にまだいるからだ。  俺達は化け物になりきれない。  「また、来るよ」  俺はそっと彼の手を離した。  彼は震えていた。  髪を撫でて抱きしめてあげたかったが我慢した。  俺は彼を助けたい。  それは本当だったんだ。

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