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生存権8
「で、どうすんの、追いかけるの?」
ガキに聞かれた。
運転しながらセックスするってのをしたせいで、めちゃくちゃ怒っていたが、やっと機嫌が治ったらしい。
気持ち良かったくせに。
イったくせに。
面白かった。
形だけ謝ったが、またしたいと僕は思っている。
「向こうから来るさ、絶対に」
狂犬はあれでもヤクザだ。
自分の「オンナ」攫われて、自分が「ハメられて」そんな真似されて相手に何もしないなんて有り得ない。
今は取り戻した青年相手に「ハメて」いるかもしれないが、絶対に「落とし前」つけにくるはずだ。
「毒は効かなかったし、人質はとりもどされたし・・・どうすんの」
ガキの言葉に僕は笑う。
「【毒】は確かに計算外だった。動けないはずなんだよ。だけど、人質に関してはむしろこれはこれでいい」
青年がいなくなっているのに喜んでいるのは内緒だ。
「狂犬は二度とあの子を 自分の側から離さないだろう。つまり連れて歩く。足手まといになるぞ。しかも狂犬は確実にあの子を守りに来るだろう」
あの青年に傷一つつけられるのも耐えられないだろう。
狂犬のたった一つの宝物。
首さえ切り離されなければ死なないとわかっているのに、守りに来るだろう。
「狂犬ではなく、あの子を攻撃してやればいい。狂犬はそちらに気をとられる。それを利用して追い詰める」
僕は笑った。
「 なんなら、目の前で捕まえて、あの子の指でも切り落としてやれば、狂犬はこちらに逆らえない」
守りたいものがあるヤツは弱い。
「思考回路が徹底的に悪者だよね、アンタ」
ガキがため息をつく。
「殺さないって約束した」
ガキに言われる。
あくまでも、あの青年がこちらに協力したらって話だったんだが、でもいい。
あまり強情をはるとガキの機嫌が悪くなるし。
「殺さない。多少傷つけるかもしれないけど」
約束しておこう。
「・・・あの狂犬は死なないと分かっていても、あの子か傷つくのに耐えられないんだな」
ガキがポツリとつぶやいた。
「でも、アンタは訓練でも平気で俺の心臓狙って撃ってくるよね・・・」
ガキの目が怖い。
「いや、お前撃つのはそれはそれで、貫いてるってのがね それはそれで。」
瀕死のガキが色っぽいのは事実だ。
それが好きなのも認める。
「ふうん」
ガキがため息をついた。
「確かに、僕はお前に傷一つつけたくないとか、守ってやろうとか、一ミリも考えてはいないし、お前とこの先仕事をする時は、お前が首を切り落とされるようなことでもなければ僕はお前を助けないだろう」
僕は断言した。
でなければ、仕事にならない。
不死身も利用してガキは仕事で使う。
ただし、このガキを犯すとかそういうのを、されるのはまた別。
コイツに入れていいのも、コイツをイかせていいのも僕だけだ。
「それに何より、僕は僕から逃げようとあの子みたいな事をしたら、狂犬とは違って取り戻しになんか行かない。僕はお前を絶対に殺しに行く」
逃げたいと思うことさえ許さない。
裏切りなどほんの少しも許さない。
「どこに逃げても、僕のこの手で殺してやる」
僕はガキを抱きしめながら言った。
僕が怖いか?
僕はお前を殺せる。
殺せるんだ。
こんなに可愛くても。
「・・・だからアンタは俺の意志を縛らないのか」
ガキが腕の中でため息をつく。
「俺に、俺の意志でアンタから離れないでいて欲しいんだな・・・分かってるよ」
ガキから抱きしめ返される。
この、ガキ・・・。
「俺の死さえ、あんたのモノなのか。分かってる?アンタ、めちゃくちゃ強欲だ」
ガキからキスされた。
これは予定外。
「アンタは俺が全部欲しいんだ」
クスリと笑われて、僕は顔がまた赤くなった。
この、ガキ。
この、ガキ。
僕は主導権を取り戻すべく、ガキの口内を蹂躙する。
「お前の死さえ僕のモノだ」
僕は囁く。
誰かと「仕事」したことがなかった。
誰も信じてないから。
でも、ガキとは「仕事」する。
信じてるからじゃない。
信じたいからだ。
そんなこと 、誰にも思ったことなんてなかったんだ。
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