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捕食者狩り4

 「見張り、殺して携帯奪ったわけね」  あの人は電話に向かって言う。  狂犬を監視していたスーツ達が襲われたのだろう。  あれほどこちらから見えていたら、相手にも見えていると言っておいたのに。  「ああ、お前に埋め込まれた発信機の受信機ももらったから逃げられないぞ」  低く深い声が言う。   この人は国から監視されるために脳に発信機を埋め込まれている。  場所が場所だけに、そう簡単には取り出せない。  「・・・しかし、いい声だな。あんた。その声だけでイけそうだ」  あの人は狂犬に電話で囁く。  「お前がアイツに触ったヤツだな・・・。オレと同じバケモンなんだってな。色々【教えて】もらったぜ」  狂犬が笑う。  「そうか、あんた拷問の専門家だったな。殺した中にあんたほどはデカくないが、それなりにでかくて、無表情で、見てもすぐ忘れるような顔の男いないかった?」  あの人がスーツについて聞いているんだろうな、と分かった。  スーツを心配してるのだろうか。 意外だ。  「三人程殺したが、そういうのはいなかったな」  狂犬がなんでそんなことを聞くのかと、不思議そうに言う。  「残念殺してないまね。殺しておいてくれたら良かったのに・・・」 あの人の心底残念そうな声。  あ、そっちね。  しかし、この人本当にスーツが嫌いだよな。 いい人なのに。  「自分の心配をしてろ。人のモンかっさらって、しかも触りやがって・・・お前だけは絶対になぶり殺してやる」  声が深く響き、殺意を明確に伝えてくる。 「うわぁ、いい声だ。たまらないな。僕が殺す時も、あんたそんないい声出してくれるんだろ、楽しみだ」  あの人はうっとりしていた。  狂犬が笑った。  あの人も笑った。  二人の化け物が笑っていた。  「待ってろ 」  電話がきれた。  「お前さっさとトイレか風呂で穴から精液かきだしてこい。ズボンが汚れたら嫌だろ」  男に言われる。  男は携帯を弄り、何かを確認する。  「うん、あんなこと言ってたけど、まだまだ時間かかるから、ほら、急げ」  俺は言われるがままに風呂場に向かったけれど、不思議に思った。  「なんであっちの位置があんたにわかるんだ?」  向かいながら叫ぶように聞く俺の言葉に、少し男は黙った。  「・・・狂犬の可愛いあの子の方に仕込んであるんだよ」 しぶしぶといった感じであの人が言った。  「いつの間に?」  俺は驚いた。  「車に連れ込んだ時に、お前にトランクに荷物とりに行かせただろ、あの時に口移しで飲ませたんだよ 。数日しか持たないけど、国が開発したカプセル状の発信機」 早くちでごまかすようにあの人が言う。  ・・・口移しで?  はぁ?  俺はいらっとしたが、風呂場で、穴で精液をかきだしながら洗う。  当たり前のように中で出してるし、こんなに注ぎ込むくせに。  口移しって。  繊細なあの子の唇に、あの人の薄く整った唇が触れたのか。   舌を入れて、唾液をあの子がのみこむように、舌で口内を蹂躙したのか。  面白くなかった。  しかも、コソコソと。  面白くなかったし、その上ムカついた。  

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