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捕食者狩り6
俺は物陰から飛び出し、走りながら銃を撃った。
俺は速い。
膝の治った俺はとてもじゃないが、速い。
文法的は正しくないけど、そうなんだ。
俺は速い。
速いんだ。
走る俺に、狙いを付けるのは難しいはずだ。
ただ、俺の射撃の腕では走りながら撃ったら当たらないけれど。
俺達は、建築中の建物の中にいた。
基礎の壁と床までが出来ただけで、それもまだ4階くらいまでしか出来てない。
いずれはショッピングモールになるはずの建物は、吹き抜けになっていて、いずれはエスカレーターで上に上がれるようになる代わりに、今は仮の階段がつけられていた。
一階の広場を見下ろすような構造になっていた。
いずれここにエスカレーターができて、店を周りながら人々は上り下りするのだろう。
一階の広場になっている場所に立つ狂犬を、俺は撃ちながらその3階をぐるりと一周するように走っていた。
当たらない。
まあ、当然だ。
じっくり構えて、動いてない的にやっと当たるくらいなんだから。
俺は物陰に隠れる。
柱の影だ。
銃の弾丸を補充する。
リボルバーなんてどうだよ。
とうせ当たらないと言うのとか、まあ色々あってこの銃を渡されている。
ここにいれば、少なくとも男が何かを投げても大丈夫・・・。
衝撃音がした。
肩に劇痛が走る。
俺は叫ぶ。
俺が隠れていたコンクリートの柱を何かが抜けてきたのだ。
肩の肉を鉄棒が貫いていた。
何に使うのかわからない建築用の鉄の棒状の鋼材が壁を貫通しさらに俺を貫いていたのだ。
俺は、肩から鉄の棒を生やし、柱に貫き止められていた。
昆虫の標本のように。
狂犬が投げたのだ。
コンクリートさえ、鉄棒でぶち抜けるのだ、あの狂犬の怪力は。
必死で肩を貫く鉄の棒を抜く。
衝撃音。
頭をかすめるようにまた新しい棒が柱を貫通してきた。
柱の影さえ、安心ではないなんて。
俺は恐怖し、また走る。
走る俺の後に鉄材が壁にどんどん刺さっていく。
何本あるんだよ!
でも、これでいいこれでいいんだ。
俺を狙っている間は、狂犬は他を狙えない。
もうすぐ、射的距離まで近づいたあの人が、狂犬を狙い撃ちするはずだ。
俺はそのための餌だ。
俺ではなく、俺の行く手を阻むように鉄材が撃ち込まれた。
俺はそれを跳ぶ。
これでは俺は止められない。
なめんな、俺は世界をめざしていたハードルの選手だぞ。
この階はダメだ、4階に逃げよう。
俺が階段にたどり着いた時、俺は信じられないものをく見た。
狂犬は上着を脱ぎ捨てて上半身裸になっていた。
その理由が、有り得ないほどに膨らんだ筋肉のせいなのはわかった。
そして今、全身を真っ赤に染め、憤怒の顔で狂犬が持ち上げているのは・・・巨大なクレーン車だった。
「ウソ、だろ」
俺は思わず笑った。
それを三階まで投げるつもり?
悪い冗談みたいで。
でも、冗談ではなく、クレーン車は俺の方に飛んできたのだ。
こんなん、もう、反則すぎる。
階段は吹き飛び、三階の床も吹き飛んだ。
俺はかろうじて、潰されることは避けれたが、床がクレーン車と共に崩れて行くのと一緒に一階まで、落ちていった。
床に叩きつけられる。
骨が砕ける音を聞く。
身体の上にコンクリートの塊が降り注ぎ、さらに身体を押しつぶす。
骨が内臓に刺さってる痛みも。
そんなのは良かった。
真っ赤になった、憤怒の形相の鬼がこちらに近付いてくることに比べたら、そんな痛みや重さなんてどうでも良かった。
なんだよ、コイツ。
反則すぎる。
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