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捕食者狩り7
必死で身体をコンクリートの塊の間から抜こうとする。
もうすでに骨が繋がった右手で、かき分ける。
左脚だけが、デカい塊に乗られていてぬけない。
脚の骨を折れるのを承知で強引に抜く。
すげえ痛い。
だけど、こんな痛みは何でもない。
もっと恐ろしいモノが近付いてきているのだから。
バキバキと骨を折りながら、引き抜いた。
俺は痛みに叫んだ。
足首とかが、有り得ない方向に曲がっている。
無事な右足だけで立つ。
銃を構え、泣きながら狂犬を撃つ。
怖かった。怖かった。
だって頭を撃ち抜いたが、全く気にせず歩いてくる。
早く回復しろ、俺の脚。
回復してくれれば、俺は速い、速いんだ。
狂犬がすぐ前にいた。
その身体のデカさに恐怖した。
巨大な肉食獣のよう。
熊を前にしたら、人はこの恐怖と同じモノを感じるのではないだろうか。
膨れ上がった筋肉が、この男が何ができるのかを教えてくれている。
生きながら引き裂かれると。
つり上がった眼は怒りに青く光って。
本当に怒りで髪が逆立つことを俺は知った。
恐怖のあまり、俺は銃を効かないとわかっているのに撃ち続けた。
弾がなくなっても。
カチカチカチ
引き金を引く音だけがする。
巨大な腕がのばされる。
俺のウエストくらいはある腕だ。
俺は逃げようとした。
でも、脚の骨はまだくっついていなくて。
倒れる俺の腕を狂犬が掴んだ。
「・・・あ」
俺は呻いた
俺の腕はパンでも千切るかのように引き裂かれた。
ブチブチ
筋が切れる音がし、血管がはじけ、血が吹き出す。
俺は恐怖と痛みに声の限り叫んだ。
左腕をもがれ、倒れた俺にのしかかるように狂犬はおおいかぶさった。
狂犬の手で抑えられた左肩がぐしゃりと潰れた。
「痛、い・・・」
俺は叫ぶ。
男はまるでキスするかのように顔を近づけた。
つり上がった眼、歪んだ口は歯をむき出していて、鬼がそこにいた。
狂犬は口を開いたけれど、その口からは獣の咆哮が出ただけで、およそ、人の言葉がわかるモノだとも思えないほどだった。
狂犬の股間が有り得ないほど、盛り上がっていて、俺は狂犬が欲情しているのがわかる。
とんでもなくデカい。
びびる。
あの子よくこんなモノを・・・。
こんなもん、裂けちまう。
一瞬入れられることを考えてしまった。
青く光る目が俺を見下ろしていた。
その目は俺に欲情していた。
いや、俺を殺すことに欲情している。
狂犬が俺の右肩の肉を噛み切った。
「あああ!!」
俺はまるで犯されるかの様に、叫んだ。
いや、これはある意味、セックスなのだ。
捕食者にとって。
俺は泣く。
怖くて、痛くて。
右腕は皮膚一枚でつながっているだけだ。
腹の上に狂犬のとんでもなくデカい拳が置かれた。
狂犬が俺の腹にゆっくりと拳をめり込ませていく。
皮膚が破かれ、肉を潰しながら、太い腕がめり込んでくる。
「や、め、ろ」
俺はのけぞりながら、呻いた。
ぐちゅ、ぐちゅ、
潰れてく音かした。
血が溢れていく。
デカい腕が内臓をつぶして、背中まで抜けていく。
「ああああァ~!」
俺は文字通りデカいモノに 貫かれて声を上げていた。
狂犬が俺の脚に手をかけた。
千切るつもりだ。
俺は覚悟して目を閉じた。
かすかな空気音。
その後の衝撃波。
狂犬の右手が消えていた。
右腕を失った狂犬がそれを見て叫んだ。
涼しい声がした。
「 ネトラレんのも意外と悪くない、なんて思ってしまったけど、ここまでだ。ソレ僕のだから」
あの人が立っていた。
遅い!
遅すぎる!
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