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捕食者狩り13

 「身体が繋がらない内に狂犬の身体どこかに閉じ込めておけばいいんじゃないのか?」  ガキが言った。  「うん?」  僕は聞き返す。  「ほら、最初のプランでは・・・」  ガキが、狂犬に近付く。  両腕を失い、まだ脚も膝位までしかくっついていない、狂犬は死体のように目を見開いたまま、身動きさえしなかった。  「あそこに置いておけば、安心なんじゃ・・・」  ガキが狂犬のすぐ側に近づいた時だった。  虚ろな狂犬の目がカッと見開かれた。  両腕もなく、膝から下もない狂犬の身体が跳ね上がった。  ガキの脚にかみつかれた。  肉が食いちぎられた。  ガキが叫んだ。  そうか、狂犬は、僕を殺せなくても、ガキはまだ殺せるのだ。  ガキの首を噛み切ればガキは死ぬ。  コイツ、せめてガキを連れて行くつもりだ。  僕の銃はまだ撃てない。  僕の身体もまだ動けない。  「逃げろ!」  僕はそう叫ぶしかなかった。  狂犬のヤツ、ガキを殺すつもりだ。  せめてもの腹いせに。  ガキは走り出した。  膝までしかない狂犬の身体が跳ねるよう動く。  狂犬はその身体で走ってみせた。  走ると言うよりは跳ねていた。   飛ぶように。  目が飛び出すほどに見開かれた、ガキの血で真っ赤に染まった顔は、歯をむき出しにしていた。  化け物が吠えた。  僕でさえ、おもわずゾクリとするような、恐ろしい光景だった。  手足のない化け物が追いかけて来るのだ。  まるで、ホラー映画だった。  ガキは速い、しかし、今は脚をやられていて。  噛まれた脚はそんなにはやくは回復せず、脚を引きずるガキのすぐ側まで狂犬は来ていた。  まだ床の工事中のブルーシートをよけようとするかのように、ガキはシートをのりこえるように飛んだ。  狂犬はそんなガキを追いかけようとして・・・。  ブルーシートの上に乗った狂犬は、落ちていった。  ブルーシートは穴を隠すために置かれていたのだから。

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