73 / 76

正義の味方3

 俺は公園のベンチで鳥を見ていた。 あれから1週間になる。  あの子はここで双眼鏡を片手にスケッチしていた。  俺には単なる鳥でしかないけれど、彼にはこの風景か違うように見えたのだろう。  俺達は何なのだろう。  従属者。  ただ、思いのままに出来る者が必要なために俺達がいるのならば、最初から意志など持たないようにすればいいのに。  狂犬を殺したのは結局あの子の意志なのだし。  まるで、捕食者達の番のような俺達。  そこに意味があるのだろうか。  なぜ、捕食者が生まれたのか。  なぜ、従属者が必要なのか。  考えてしまう。  あの子を羨ましいとも思う。  あの子は狂犬をモノにした。  全部奪ってみせた。  俺はまだあの人を抱かせてもらってない。  ごまかされ続けている。  ・・・抱きたい。  ホント、抱きたい。  それに好きだとも言われたことがない。   色々不満はあるし。  親や友達が恋しくもある。  でも。  俺はあの人が好きだ。  なんでだかは良く分からないけど。  本当に性格悪いし、腹黒いし、わがままだし、嫉妬深いし。  すぐ殺すし。  ちょっとまて、・・・良いところがないぞ。   顔と身体は最高だけど。    俺、そこまで外見重視なのかよ。  「行くぞ、ガキ」  あの人が俺を呼んだ。  でも、この人は可愛い。  恐ろしい人だけど、俺だけには可愛い。  俺は立ち上がり、あの人のところへ行く。  今は同じ位の背だけど、俺はもっとデカくなるし、強くなるし、あの人に抱かれるより抱く方が似合うようになる。  この人を毎晩のように抱くのは俺になる。  「悪者退治だ」  あの人が笑う。  「あんたが一番悪者なんだけどね」  俺は言う。  「正義とは手段を選ばないからな」  ニヤリとあの人は悪い笑い方をした。  また腹黒い計画を考えているんだろう。  俺は呆れる。  でもいい。  とりあえず、俺達は正義の味方だ。  とにかく、今はそれでいい。  俺はあの人と一緒に歩きはじめた。                END

ともだちにシェアしよう!