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翼あるもの2

 暗闇だから見えなかった。  千切って殺して、死体を処理していた時、誰かが見ていることに気づいた。  オレは夜目は利かない。  暗闇に誰かがいることにだから気付くのが遅れた。  そして、気づいた。  アイツだ。  アイツだ。    見られた。    見られたら、殺さないといけない。  殺したらもう、見れない。  オレの鳥。  オレの前を飛んでいく、羽根のある生き物。  オレは、思ってしまった。  羽根をもごう。    羽根を奪えば、ずっと見ることができる。  怯えた目。  この目を近くで見れる。  細い首。  これに触れれる。  唇。   そして、羽根さえもげば、コイツの中に入れる。  触ってしまえば壊してしまうのに。  その飛ぶ姿が好きだったのに。  オレはどうしても、この手の中にソイツを入れてしまいたかった。  握りつぶしてしまうのに。  「なんで・・・」  オレはつぶやいた。   何故今ここに来た。  もう、オレは止められない。  オレは、アイツに近づいた。  手を伸ばしてしまった。  羽根をもぐために。     そして、羽根をむしり取った。  オレの腕の中で眠るコイツをオレは抱きしめる。  今は笑ってくれる。  オレにキスもしてくれる。  こんなに幸せな夜があるなんて思わなかった。  今日は二人で服を買いにいった。  コイツが選んだ服を着て、帰る帰り道、オレは初めて人がオレを見ないことに気付いた。  いや、デカいから見られてはいる。  でも、暗いところから出てきた生き物を見るような目ではなく、「大きい人だ」とささやかれる声も、怯えたような声ではなかった。  コイツといると、世界の違った場所にいるみたいだった。  幸せだ。  奪ってしまった翼。  胸は痛む。  それでもオレは幸せだ。  だから、コイツは俺に何をしてもいい。  俺が奪ったから、オレに何をしてもいい。  でも、オレは。  コイツから翼を奪ったことを後悔しないだろう。  オレの鳥。  見ているだけでは耐えれなかった。  手を伸ばしたのはオレ。  奪うのもオレ。  だから、お前に何をされてもオレは構わない。     End  

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