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第5話
傑と迎えた二回目の朝。
十五時ちょうど。同じベッドで寝て、同じ時間に目覚める。
薄い掛け布団は傑に持っていかれていた。
もしこの状態が続くならもう一枚掛け布団を買うべきだ。
朝食を食べるのが苦手だと言った傑のためにりんごを剥いて出した。
紅茶を濃いめに淹れてあげたら喜んでいる。
人懐こい性格なのか、人の家でリラックスして紅茶を飲んでいる男の顔を眺める。
今日この大好きな顔に抱かれるのかもしれないと思うと不思議な気分だ。
「なに?」
視線に気がついた傑に微笑まれる。
あまりの美しさに心臓を押さえて呻くところだった。
「なんでもないよ」
努めて平気なふりをする。朝からやや刺激が強い。
「今度、優ちゃんのお店に行きたい」
「うちのお店、女性が多いから……」
きっとゆっくりする時間がなくなってしまう。客として来店しても仕事をしているようになるのはいただけない。
「そっかあ……」
俺が言わんとすることを察した傑はあからさまにしょげた顔をしている。
どうにかしてあげたくなってしまうほど眉が下がっている。
俺のこういうところがメンヘラを寄せつけるのだと何度も言われたし、傑は傑でその顔でシャンパンを入れてもらっているのが容易に想像つく。
「またあとで」
「行ってらっしゃい」
ひらひらと手を振って家を出ていく傑を見送った。
そういえば、歴代の恋人とも同棲も泊まりすらしたことがない。本当に不思議な気持ちだ。
美しい顔は罪深い。
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