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第6話

 仕事をこなして家に帰ると、もうすでに傑が待っていた。  本当に早く帰ってきたらしい。拾った時と同じ革靴が乱雑に三和土に脱ぎ捨てられている。 「ただいま」 「おかえり」  勝手知ったるという顔でベッドに寝そべっている傑に近づくと、あっという間に引きずり込まれていた。薄い体のどこに筋肉を隠しているのだろう。 「洗ってあるから」 「……?」  言っている意味がわからず、榛色の瞳を見つめ返す。  しかし、至って真面目な傑は少し疲れた顔で見下ろしてくるだけだった。  もしかして、と思いながら、黒いスウェットの中に手を滑り込ませる。  手に直接触れる柔らかい肌。何か物足りないような気がして、恐る恐る尋ねた。 「パンツは?」 「どうせ脱ぐと思って」  ふっくらした尻の間に指で軽く触れると、少し熱を持っている。  中からはみ出たローションが指先を濡らして、俺はやっと言葉の意味をちゃんと理解した。 「でも今日は挿入れられないよ」 「なんで」 「ちょっと腫れてるし、無理はよくない」  むくれていく顔を見ながら、傑が自分自身のお尻に興味があったことに驚いた。てっきり挿入れたいのかと。 「……男同士でするの初めてでしょう」 「そうだけど」 「指で触ってあげるから、気持ちいいところ探そう。ちんこいれんのはまた今度」  チッ、と舌打ちしながら上から退いた。ころりとベッドに転がった傑にうつ伏せになるように促した。  大人しくされるがままなっていることにちょっと興奮しつつ、スウェットを太腿までさげた。  二度目ましての傑の裸体。薄いのになんだかむっちりしている太ももから尻を撫でる。くすぐったそうに笑った傑がかわいくて、お尻にキスをした。  濡れているふちにそっと指を埋めた。  転がっていたローションを垂らして、少しずつ出し入れする。  縁の周りも感じるらしい。腰がぴくぴく跳ねている。  ゆるんできた縁に、ゆっくりと指を挿入れていく。  きゅう、と締めつける中の熱さに下半身がちょっと反応したが、心中はそれどころではない。俺が失敗したら、傑は病院に行くことになってしまう。痔で。 「痛い?」 「いたくはない……けど異物感がすごい」 「おーけー」  自分でもちょっと触ってみたらしい。縁が腫れていたのはそのせいのようだ。  媚肉をゆっくりかきわけながら、傑のイイトコロを探す。  ぷらんと垂れているちんこに触れると、気持ちよさそうに吐息をもらす。  傑のちんこをしごきながら、中を探っているとちょっとこりっとしたところに触れた。 「わっ、んん」 「ごめん、ちょっと強かったね。ゆっくりさわるから」  恨めしそうに振り返った目が涙ぐんでいる。突然の刺激に驚いたらしい。  申し訳なく思いながらも、前立腺を見つけられた達成感で満ち足りている。  強い刺激を与えないようにやさしく触っているうちに、指は二本に増えていた。  努力の甲斐あって、傑も快感を得られるようになってきたようだ。耳まで赤くなっているし、呻き声にしては甘い声が聞こえる。  だらだらと先から溢れているがシーツを汚していく。  気持ちいいのに、達するほどではない快感にずっと浸っているのはさすがに苦しいだろう。 「今日はここまでにしようか。次は挿入れられると思うよ」 「ん……」  仰向けに転がった拍子にちんこが薄い腹を打つ。  榛色はとろとろに蕩け、ぼんやりと天井を見つめていた。 「キスしても?」 「どーぞ」  お伺いを立てると舌がにゅっと差し出される。  初めてするのに、最初から深いキスをお望みのようだ。舌を食べるように口に含んで、唇を合わせる。  くちゅくちゅと音をたてながらキスしていると、水音が増えた。  先走りを溢すだけで、射精に至っていないものを扱いている。  横目でそれを見ていると、だんだん下腹部が疼いてくる。  解す時に我慢していた欲が堰を切ったように溢れてくる。 「まって。ちょっとまって」 「なに……」 「用意してくるから俺に挿入れて」  傑は一瞬固まっていたが、なんだか嬉しそうに笑った。  そして俺の頬にキスすると「待ってる」と囁いた。

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