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第10話
夜とはいえ、昼の暑さを引きずるようにねっとりと汗ばむ。
肌にしっとり張りつくTシャツを剥がしながら家に帰った。
そろそろ見慣れてきた革靴は、拾った時のものではない。
いいの履いてるな、と思いながらリビングにいくと、これまた見慣れた格好をしている傑が深夜アニメを見ている。
見慣れたのは俺の部屋着を着ている姿だけで、その容姿や存在に慣れたわけではない。
「アニメ見るんだ」
「アニメ好きなお姫様がいる」
お姫様の好きなものをしっかり把握しているところはさすがNo. 1だ。
「何か食べた?」
「ケバブ食べたけど腹減ってる」
「じゃあなんかつくるよ」
台所に向かおうとすると、くい、と裾を引かれる。
「……優ちゃん、明日休みだったよね」
「そうだね。月曜日が定休日だから」
「……俺も明日休みなんだ」
ほんのりピンクに染まった白磁の肌。うぶな誘い方に心がかき乱される。これがNo. 1様のおねだりか、と思うと同時に陥落した。
「あとで一緒におしり洗おうね」
気まずそうに目を逸らした傑の頬に口づける。
「優ちゃんって、おとこ慣れてるの」
「そこそこ?」
そこそこ……と復唱するとおずおずとアニメ鑑賞に戻っていく。
男に尻を開発されることにびびっているホスト様に人生で初めて出会った。
白いうなじを見つめながら、面白いな、とこっそり笑った。
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