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第18話
肩に乗る傑の体温が心地よくて、ときどき眠りに落ちかける。
差し入れでもらった、と傑が持って帰ってきたシャンパンで、ほろほろと酔いながら海辺の街で男女が恋する映画を見ていた。
足の上に投げ出された白いふくらはぎ。
我が物顔で履いているのは俺の夏用のステテコだ。
勝手にタンスを漁って「おじさんくさいね」とか言っていたが、気に入ったらしい。
手持ち無沙汰で、やわらかい肉を撫で、足先をくすぐり、ふとももへと手を這わせる。
うちもものやわらかい肉を堪能していると、くすぐったそうに身を捩った。
「えっち」
全然嫌そうじゃない顔で起き上がって、木にしがみつくコアラのように抱きしめられる。
Tシャツをめくって腹を撫でて、ふと気がついた。
「肌艶よくなった?」
「ふふん。優ちゃんのおかげ」
一ヶ月でそんなに変わるのだろうか、と思って顎をとらえた。
ぷるぷると潤んでいるくちびると、酒精で色づいた頬。
意識して見ると、出会ってすぐに触れたときより肌のキメが細かい気がする。
たった一ヶ月、されど一ヶ月。
今まで一体どんな生活をしてきたか知らないが、俺の家によく来るようになって生活が改善されたらしい。
「ハマりそう……」
「何に?」
「傑の肌を育てるのに」
「目一杯育てちゃってくださいよ」
なぜか偉そうな傑は、顎をとらえていた指に指を絡めてくる。
そういえば、水仕事をしていないのに荒れていた手も綺麗になっている。
恋人みたいな距離感にもそろそろ慣れてきた。
傑はスキンシップ過多だが、かといって会うたびセックスをしなくてもいいらしい。
ただ、スキンシップの一環に抜きあいが入っているから、たびたび股間を弄られて、その気になって散々触り合ってしまう。
誓約書のせいで傑は浮気できない。
おかげでほぼ毎日一緒に食事をし、同じベッドで抱き合って寝る。
朝は一緒に朝食をとって仕事に行く。
びっくりするぐらい恋人のお手本のような生活を送っている。
映画を見終わっても、傑はしばらく動かない。
映画をぼんやりと反芻しているのか、ただくっついていたいだけなのかはわからない。
「優って運転免許持ってるの?」
「あるよ」
「海行きたいな」
耳たぶにキスされる。この時期に海かあ、とは思わなかったが、タイミングを逃したら寒いだろう。
今ならそんなに人もいなさそうだし、デートするにはちょうどいいかもしれない。
何しろ俺の恋人様は世界で一番顔がいいので。
「いいよ。休み合わせられそう?」
「次の月曜日、休みにしてある」
え、と思っていると傑が悪戯っぽく笑った。
「優ちゃんと過ごそうと思って」
「そ、そっか……運転がんばるね」
「車は俺が借りておくよ」
初めての遠出に心が浮き足立つ。傑も楽しそうにハミングしながら、近場でレンタカーを借りられる場所を探している。
「優ちゃん、ちょっといい車借りていい?」
「いいけど、ナンバーがれなの恥ずかしくない?」
「たしかに……」
一瞬神妙な顔して考え込んだが、すぐにスマホを操作し始めた。
かくしてナンバープレートが「れ」あるいは「わ」のちょっといい車でのドライブが決まった。
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