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第20話
達成感に満ち溢れている傑は、手に残った日焼け止めを自分の腕に塗ると、波打ち際に向かって駆け寄っていく。
途中まで追いかけたが、砂の熱が心地よくてしばらく足を埋めていると、傑に手をひかれてあっという間に足が濡れた。
「けっこう冷たい」
「おひさまあっついけど、秋だね!」
おひさま、と言うのが可愛くて微笑んだ。
傑は楽しそうに波で手を濡らしている。美しい金髪が海面で弾けた光できらきらと輝いている。
本当に天使のようだ。
思わず目を細めて見守っていると、傑も俺をじいっと見つめてくる。
お腹空いたのかな、とパラソルの下のコンビニの袋に目をやった。
「さっきは運転中だったから言わなかったんだけどさ」
「うん?」
傑に視線を戻すと、あっという間にサングラス越しの瞳が迫ってくる。
「サングラス、新鮮」
「傑が貸してくれたから」
「うん。似合うかなって」
にっこりと口角があがる。
少しでも俺のことを考えてくれたことが嬉しくて、思わずくちびるを奪った。
かちゃ、とサングラスがあたる音がする。
嫌だったかな、と恐る恐る唇を離した。
暗いレンズの向こうで、長いまつ毛が瞬いた。
「もう一回」
甘ったるくねだるくちびるに唇をそっと合わせる。やんわりと形を変える感触に、また頭の中が破裂する。
遅くきた浮かれた夏がスキップしながら襲ってくる。
波打ち際で足を濡らしながらしばらくキスをしていた。
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