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第24話
「どんなに女と浮気されても、悪い男だなあって許しちゃうんです」
「あらぁ」
傑は俺の家にほとんど居候している。
ガスも電気も止められているとかなんとか。
女性解禁になってからは、女の家をふらふらしたり、俺の家にいたりと気紛れな猫のような生き方をしている。
かと言って、恋人扱いされていないわけでもない。
休みが被った日におうちデートに誘っても嫌な顔はしないし、セックスだって向こうから誘ってくることのほうが多い。
一度だけ面倒臭い絡み方をしたが、その時だって眉毛一本顰めなかった。
あの日は疲れて帰ったら、女の香水をぷんぷんさせて傑は家にいた。
ソファでごろごろしながら映画を見ている男に俺は不機嫌を思いきりぶつけた。
「お姫様と俺の違いって何?」
面倒臭い質問に榛色が瞬く。そして薄い唇がにやりと歪んで下卑た笑みが浮かんだ。
「ちんこの有無?」
お姫様たちがいたら卒倒しそうな下品さ。
さらに機嫌を損ねていると、にやにやしたまま抱きついてくる。
長くて細い体を絡めて、ぴったりくっつく。本当に甘え方が上手な男だと常々思う。
どんなに俺の金を使ってパチンコでボロ負けしてきても、女の匂いがしても、俺のスウェットを着てごろごろろしている男を見るとどうしても幸せになってしまうのだ。
それでも、ひどい女の匂いに顔を顰めていると、唇の端にキスが落ちてくる。
「優といるときは薔薇背負ってないじゃん」
薔薇を背負っている自覚がおありの三次元の人間がこの世にどれだけいるのだろうか。
呆れて笑うと追い討ちをかけてくる。
「俺が機嫌とるのなんて、優ちゃんだけだけど?」
「……お姫様にシャンパン入れてもらうためにとってるんじゃないの」
「勝手に入れてくれるからその必要ないね」
あちこちにキスしてくる自信たっぷりのNo. 1様を抱きしめて、俺はため息を吐く。
出逢って一日で付き合い始めたし、うるさいことは何も言えない。向こうは仕事も絡んでいる。
たまに面倒臭いことを言っても、こうして家に帰ってくるのはちょっとは愛されているのだろう。
暗証番号である愛を囁かなくても金以外が出てくるATMだと思われているのかもしれないけれど。
別れたいと言ってこないのに甘えて、だらだら付き合いっている俺も悪いのだ。
何しろ、ベロベロに酔っ払っている可愛い男の隣で「わるいおとこだなあ」と思いつつ寝るのが幸せすぎるせいで。
「体の相性はどうなの?」
「ちょっと、ゆりこさん」
吉澤さんが堂々と夜の営みについて話始めたゆりこさんを諫める。
「良好だと思います」
怒られないようにひそひそと声を落とす。ゆりこさんはにんまり笑うととんでもないことを言い出した。
「女じゃ満足できない体にしてやればいいのよ」
「うぇ?」
「尻を落とすのが手っ取り早いわ。どっちがネコなの?」
「日によりけり……」
「それなら楽ね。恋人の尻ぐらい、どうにかこうにかしちゃいなさい」
「そいつ、アドバイス聞かないよ」
なんて吉澤さんがぼやいている。
傑の尻を思い出す。
白くてまろい尻。
筋肉がついていないせいか、傑の尻はやわらかい。
枕にして眠れるぐらいだ。
そんなことをしたら蹴飛ばされること間違いなしだが。
そのお尻をあんなことやこんなことして。
とろとろのぐちゃぐちゃに。
「やってみる。ありがとう、ゆりこさん」
「なんもよ! とりあえず飲みなさい!」
ゆりこさんに背中をばしばし叩かれる。
ジントニックのおかわりがいつの間にか頼まれていて、夜は酒と共に進んでいった。
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