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第33話

 頬にあたる柔らかい髪。肌を這う熱くて熟れた舌。  耳たぶをくすぐる甘い吐息。  滑らかな肌の体温はあまく、手でもっちりした肉を甘やかす。久しぶりに触る柔らかい肌。  とんでもないいい夢を見ている気がする。 「ゆう、おきて……」  たしかに俺は寝ている。目が覚めたらこの甘美な熱から遠ざかってしまうのに、どうして覚醒を促すのだろう。  もったいないことを言う口を塞いでかき回す。酒と煙草の味、それから傑の唾液。  いいだけ吸って離すと、傑が笑った。 「起きてるの?」 「おきないよ……」 「なんで?」 「だって……夢から覚めちゃう……」 「ゆめじゃないよ。起きて、ちゃんとおれのことだいて」  夢じゃない?  ふわふわしたまま覚醒するととろけた榛色が俺を見下ろしていた。 「お、おかえり……」 「ただいま」  語尾にハートがつきそうなぐらい上機嫌に、あまったるく傑が微笑んだ。  ずず、と傑が動くと下腹部が甘く痺れる。  ひとりで飲みに行って、家に帰ってごろごろしていたら寝落ちたらしい。 「酔ってんの……?」 「めっちゃ飲んだ……かえったら優ちゃんがねてて……なんかえろかったから……」  よくわらかないが、ずっぽりハマっているのは酔っ払いの所業らしい。  一ヶ月半ぶりの傑だ。あんなに吹っ切れたつもりになっていたのに、こうしてまた触れられたことに嬉しくて、自然と口角が上がる。ちょっと濡れている目元をぬぐって気がついた。隈ができている。神が与えし美しいかんばせに。 「つかれてるの?」 「かも……やさしくして……」  枝垂れかかる柔肌を抱きしめて、うんと優しくしてやろうと決めた。

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