4 / 13

過去から現在

ーーこうなったのは何時からだろうーー アレクは寝静まったルースの顔を眺めながらそんな事を思っていた。 始まりはほんの些細な事だった。初めは精通を迎えた主に自慰や性交について教えていた。それも側近であるアレクの仕事だった。 だが、いつしかそれが発展していき最初は性交の真似事をしていたのだが、それだけでは開き足りず、本当に性交を求めた。 そして、ルースは様々な使用人と身体の関係を結んだ。ルースと関係を持った使用人は数しれず、何人もの人が遊ばれては切り捨てられ仕事を辞めていった。 使用人だけでは無い。外部の人……詰まりはこの屋敷に出入りする商人や、父親と共に仕事をする相手等にも同じ事を繰り返した。 酷い時には一度に数人を相手にし、それを見せられるだけという事があった。あまりにも廃れ、怠惰な性交ばかりを求めるルースに呆れたルースの父親が何とかしろとアレクに命じた。 「言うことを聞く代わりに相手はお前がしろ」 ルースは交換条件にそんなことを言った。それを了解し、今に至るのだがまたいつの日からか、ルースは人前で自分が犯される姿を見せびらかすことに快感を覚えたのだ。 アレクにに対する要求は過激になりつつあったが、ルースはアレクが言うことを聞く限りは自分も無駄な性交をする事は無かった。 「こんな事覚えさせてしまった事をこんなに後悔するなんてな……」 眠っているルースの頬にそっと触れ、前髪の隙間に覗く額に軽く口付けた。 「ア、レク……ん……な、に……」 ルースは目を閉じたまま静かに言った。 「なんでもありませんよ。寒くはありませんか?」 「ん……だいじょ、ぶ……すぅーー……」 「……ゆっくりおやすみ下さい」 ルースの寝息をもう一度確認してからアレクは寝室後にした。 自室に戻り、ようやく身体の熱も収まってきたように感じる。 ブラックコーヒーを入れて腰を落ち着ける。 「ふぅ……」 タバコをふかせながらコーヒーを煽る。少し濃いめに淹れたコーヒーの苦味がじんわりと身体を駆け巡る。 職務中には吸わないタバコに火をつけ、ぼんやりとさっきの事を思い出す。一度肺まで深く煙を吸い込み吐き出す。紫煙は燻り、そして消えていく。それは儚く、なんとなくもの寂しい気持ちを表しているようだった。

ともだちにシェアしよう!