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パーティ
「おい、アレク今日は客人が沢山いらっしゃるからな、準備はは万端に。そしてルースにはしっかりするように伝えておけ」
「はい、かしこまりました、旦那様」
深く一礼してアレクはルースの身支度を手伝うと言ってその場を後にした。
「ルース様、お支度の進み具合はどうですか?」
ノックをして声をかけるも返事がない。
「失礼致します」
部屋の中央に設置しているソファでルースは寝息を立てていた。ちょうど暖かい日差しが差し込む午後のこの時間は眠くなるのはわかる気がする。
「ルース様、そろそろお支度を整えないと旦那様に叱られますよ」
ゆさゆさと肩を揺するとルースはうっすらと目を開けた。
「お前が着替えさせて……」
寝ぼけ眼を擦りながらそんなことを言うルース。
「ならば、起き上がってください。お洋服はこちらでお選びしても?」
「構わん」
面倒くさそうに答えるルースを横目にクローゼットの扉を開く。中にはギッシリと洋服が掛けられている。全てを選んで良いとの事だったのでアレクはルースの目の色とおなじ青緑色のベルベット生地のジャケットを手に取る。それを中心に全身の服を合わせて選び再度ルースの元へ戻った。
「こちらでよろしいでしょうか」
「あぁ」
まだ眠たそうなルースは渋々体を起こした。
「……では、失礼致します」
アレクはルースのシャツに手をかけボタンを外していく。
白い素肌が顔をのぞかせたかと思うと直ぐに胸元に赤い痕をみつける。こんなのは昨日は付いていなかった。まだ真新しいであろうその痕からはついさっきまでルースが誰かとナニかをしていたことが読み取れた。自分の知らないところでこんな痕を付ける輩が居ることに多少腹を立てたが。気にしない素振りで着替えを進める。自分の感情よりも今は仕事が優先なのだ。
シャツを着せ、コルセットで背筋を強制してからベストとジャケットを羽織る。靴下が下がらぬようガーターで止め、ズボンを履き少し踵の高い靴を履いて最後に首元にスカーフを巻き、キュッと結んで着替えは終了。
「終わりました。いかがでしょうか」
「まぁいいんじゃないか」
「ありがとうございます。それでは、私は今夜のパーティーの準備に戻ります」
「わかった」
「あぁそうだ」
「まだ何かあるのか?」
「お戯れは程々にと旦那様が仰っていたので」
「なんだ、そんな事か。本当に口うるさいな父様は」
「お伝え致しましたので、私はこれで」
また深く一礼してアレクは自分の持ち場へと戻っていった。
何となく虫の居所が悪い気がするのはきっと気の所為だと自分に言い聞かせて……。
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