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不吉な予感

その夜、ルースは父親の主催するパーティに出席していた。 父親に連れ回されうんざりしながらも一貴族として気品ある振舞いで客人に挨拶をしていた。アレクはそんなルースを遠目に眺めながら給仕に勤しんでいる。 「あら、アレクさんこんばんは」 「これはこれは、こんばんはイザベラ様。相変わらずお綺麗ですね」 「まぁ、お上手」 声をかけてきたのは公爵家のご令嬢イザベラ様。年頃のお嬢様はルースの言葉にキャッキャと喜ぶ。 「イザベラ様、あちらでお父様がお探しですよ」 「あら、ホントだわ。ありがとうアレクさん。、それでは、また。ごきげんよう」 会釈を交し、イザベラは足早に去っていった。 「おや……?」 それ少し目を離した隙にルース姿が見えなくなっていた。辺りを見回すがそれらしき姿はどこにもない。 これはルースの予想でしか無かったが、ルースは恐らく今夜も適当に相手を見繕って行為に至るだろうからと目を離さずにいたのだ。なのに、さっきイザベラに話しかけられている間に見失ってしまった。 「私としたことが……」 アレクは会場を他の者に託し、屋敷の中を探すことにした。 「……何だか胸がざわつく」 何となく嫌な予感が頭を過り、足早にルースの姿を探した。

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