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危機

ーーその頃、ルースはと離れにある部屋に居た。 薄暗い部屋の中、天井からぶら下げられた紐に両手首を縛り上げられたまま気を失っているようだった。 寒気を感じブルリと体が震えた所で目が覚めた。 「……ん……」 「やっと起きたね」 「誰だ……」 暗がりで顔は見えなかったが、そのしゃがれ声はどこかで聞いた記憶があるとぼんやりする頭で考える。 「……なんだ、これは」 今の自分の状況に気がついたルースは声のするほうを睨んで言った。 身ぐるみは剥がされ、下着すら付けていない状態でつるし上げられていたのだ。 身動きが取れず足をじたばたするが、思うように動かない。 「……なんで」 「ちょっと薬入れすぎたかな……でもまあまいい。暴れりても困るからな」 男は1歩ずつルースに近づく。ルースは男の方を睨みつけ続けた。 「こんな事して、俺をどうするつもりだよ……」 「そんなの、決まってるじゃないか……いつも大人を小馬鹿にしたような生意気な態度で振り回しやがって……」 どれだけ俺が苦労したか身をもって償えとその男は言った。 「やっぱりお前か……ガウリン……」 「呼び捨てとはまた……年上は敬う物だよ、ルース」 男の名前はガウリン。ルースの叔父に当たる人物だ。その昔、ガウリンもルースの遊ぶ為の駒の1人だった。 ガウリンはルースの顎を捉え、鼻先がくっつきそうな距離まで近づく。 「さぁ、ルース……おじさんとイイコトしようか」 ふーっと息をふきかけられたルースはその臭いにむせてしまう。 「げほっ……はな、れろ……酒臭いっ」 酒臭いだけならまだ我慢出来る、だが酒にまじり生臭いような変な臭いがガウリンの息には混ざっていた。 「……口の利き方も相変わらずだな。これはかなり調教が必要だな」 黄ばんだ歯を見せながらガウリンは怪しく笑った。 「いっつ……」 かと思うと、突然ルースの金髪を乱雑に引っ張り無理やり唇を重ねてきた。 「やめ……んぅっ」 無理やり唇を塞がれ、抵抗しようとも縛られてるせいで何も出来ない。そのうちヌルヌルとガウリンの舌がルースの口腔内を這いずり回った。その動きが気持ち悪いのと口臭も相まってルースは吐き気を感じた。 「んぉ……」 嫌悪感に嗚咽が漏れてもダウリンはお構い無しに無理矢理続けた。 ガリィッ 「っ……」 何とかガウリンの舌を噛んで、気持ちの悪い口付けから解放される。 「っはぁ……、はぁ……気持ち悪い……くそっ」 まだ臭いが残っている気がしてルースは唾を吐き出した。 「痛いじゃないか、ルース……君は悪い子だね、こんな事して。君は自分の立場がまるで分かっていない」 「うるさい!こんな事して……父様に言いつけるからな」 「兄貴に?ほぉ、やれるもんならやって見るといい。だが、兄貴はお前に呆れ返っていると聞いたぞ?やりたい放題しているお前の事を信用してくれるかなぁ?」 煽るような言い方をされ、ルースはイラつきを見せる。 「お前こそ、父様から見放されてるクセに。偉そうに何を言っているんだ?借金を作って屋敷を追い出されたクセに」 売り言葉に買い言葉とはまさにこの事だろう。売られた喧嘩を簡単に買うくらいにルースも冷静ではなかった。 「うるさいなぁ。君は今自分がどんな状況かわかってないみたいだね?誰も助けに来ない離れで繋がれて逃げ場もないんだよ?なのにそんな口きいて、無事でいられると思っているのかな?」 ガウリンはポケットからなにか注射器のようなものを取り出してみせた。 「なんだ、それは」 「生意気なルースくんが可愛く従順になるお薬、とでも言っておこうか」 ガウリンは怪しげな液体のソレをチラつかせる。 「今の君にはすごーく効くお薬だと思うから、注射してあげようね」 勝ち誇ったように笑いながら、ルースの腕に注射針が刺さる。 「いっ……」 相変わらず抵抗出来ないルースは簡単にその薬を注射されてしまった。 「これで少しは静かになるだろう……君が大人しくしてたら痛いことはしないよ。わかったかい?」 「こんなもんに頼らなきゃ、俺みたいなガキに勝てないとかまじ可愛そう」 鼻で笑うルース。さすがにガウリンも腹を立てたようで、ルースの頬を平手で打つ。パシンとかわいた音がしたかと思うと叩かれたソコはもう赤くなり始めていた。 「いった……」 「お前が黙らないからだろう。大人をバカにしてると痛い目見るって事を今からその体に教えこんでやるよ」 怒りに震えた手でガウリンはルースの衣類を乱雑に脱がせていく。 「やめっ……やめろ……」 動けないなりに抵抗するも、ルースは簡単に身ぐるみを剥がされてしまった。 「さぁ……お楽しみはこれからだよ……」 ガウリンのその言葉にルースはただ睨みつける事しかできなかった。

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