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ひとつ屋根の下 第23話
「なぁ……オレ何で由羅のベッドで寝てたんだ?」
『え?昨夜は何だか莉玖のこととかいろいろ話し込んでて、そのうちにあなたがおねむになっちゃったのよ――』
今日は莉玖と制作をして遊ぶつもりだったが、朝から大混乱でそれどころじゃなくなってしまった。
そもそも昨夜、由羅のベッドで寝てしまったせいで、制作の準備が全然出来ていなかった。
仕方がないので、制作は明日することにして、今日は……
「いってらっしゃい」
由羅を見送ったオレは、光の速さで洗濯物を干して、莉玖と地下室に下りた。
莉玖が隣で寝ていたのだから、莉奈ももちろん一緒にいたはずだ。
莉奈に聞けば昨夜のことはわかるはずっ!!
「――じゃあ、オレは話し込んで寝落ちしたってことかよ……いやいや、でも普通オレが寝そうになったら話切り上げて、早く自分の部屋に帰れって言うだろう!?」
『あ~……あなたは部屋に戻ろうとしてたんだけど、兄が「ここで寝ていい」って引き止めて~――……』
「ちょっと待て!引き止めた?あいつが?」
『そうよ?で、兄があなたの頭をなでなでしてたわよ』
「なでなで……?え、なんで由羅がオレの頭を撫でるんだ?」
『撫でたかったからじゃない?知らないけど、兄はあなたの頭を撫でるのが気に入ってるみたいね』
気に入ってるってなんだよ!?
オレは犬か!?犬なのかっ!?
そうか、あいつ、オレのことペット扱いしてやがんだな!?
それなら、からかってくるのも、しょっちゅう触って来るのも説明がつく!!
「あいつムカつく!!」
『なんでそういう発想になるのかしら……ペット扱いとは違うと思うけど……?』
「じゃあ、なんだよ?」
『だから、気に入ってるのよ。あなたのこと』
「気に入ってるって……だから犬や猫だと思ってるってことだろ?あいつ、オレの反応が面白いみたいなこと言ってたし」
オレが口唇を尖らせると、莉奈が腕を組んでちょっと唸った。
『あ~……兄は愛情表現が下手なのよね。私も子どもの頃はわからなくて、兄には嫌われてるんだって思い込んでた時期もあったし……』
そういやあいつ、顔が怖いって莉奈に言われたのがショックだったって言ってたな。
って、それより、あい……愛情表現だとぉ!?
愛情表現って……え、どういうことだ!?
『あなたは兄のことどう思ってるの?』
「どうって……からかってくるのはムカつくけど、まぁ……そんなに悪いやつじゃねぇとは思う……一応仕事もくれたし、待遇は悪くねぇし……」
『そういう意味じゃなくて、そうね、例えば好きか嫌いかで言えば?』
「はぁ?んなの……きら……い……ではないけど……?」
っつーか、あいつは男だし!?
好きか嫌いかって聞き方おかしいだろ!!
まぁ、その……どっちかって言うなら……たぶん……好き……だけど……
いや、それはその、いいやつって意味でな?
仕事くれたいいやつって意味だぞ!?
『そっか。まぁ、たぶん、兄はあなたがポンポン言い返してくるのが嬉しいんじゃないかしら。兄は見た通り威圧感がスゴイから、あの兄と気軽に会話ができる人って少ないと思うし……』
「威圧感っつーか、単に無愛想なだけだろ?」
『ん~……でも、あなた以外にはあんな顔しないし……やっぱりちょっと特別なんだと思うけどなぁ~……』
「何か言ったか?」
『何でもないわ、それより、そろそろお昼よ?』
「あ、莉玖、昼ご飯食べるか!上行こうな。なんだ?まだ遊びたいのか?じゃあ、ご飯食べてお昼寝したらまたボールで遊ぶか」
莉奈との会話を終えると、オレが転がしたボールを追いかけて遊んでいた莉玖を抱っこして上に戻った。
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