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はじめてのお留守番 第39話
結局オレは晩飯時まで爆睡した。
起きた時にはオレ一人だったが、莉奈曰く、由羅も4時間程一緒に爆睡していたらしい。
「あら、綾乃ちゃん起きた?」
一階に下りると、杏里が晩飯の用意をしていた。
「すみません、オレめちゃくちゃ爆睡しちゃってたみたいで……」
「いいのよ。莉玖のことがあったからあんまり眠れてなかったんでしょう?私もとくに一人目の子の時は熱出す度に心配でなかなか眠れなかったからわかるわ。もちろん、何人産んでも心配なのは変わらないけどね~……」
杏里が一路 たちが赤ちゃんだった頃を思い出したのか、少し懐かしそうな顔をした。
「あ、晩飯作るの手伝いますよ」
「もうすぐできるから大丈夫よ。今日はシチューなの。あ、響一なら、綾乃ちゃんの代わりにうちの子と遊んでるわよ」
「え!?由羅が!?」
杏里の子どもたちからは、今まで由羅に遊んでもらったことはないと聞いていたのだが……
「響一はね、今まであの子たちの相手なんてしたことなかったのよ?それが、子どもたちが綾乃ちゃんを起こしに行くって言ったら、綾乃ちゃんが起きるまでは代わりに自分が相手するから寝かせてやれって……」
杏里がさも可笑しそうに思い出し笑いをした。
「オレの代わりですか?……なんで?」
「なんでって……そりゃ、綾乃ちゃんを寝かせてあげたかったんじゃない?」
「いや、全然起こしてくれていいんすけど……っつーか、あいつの方が睡眠不足なんじゃ……?」
「響一はもともと睡眠時間短いのよ。子どもの時からあんまり寝てるところは見たことないわね」
「へぇ~……」
***
子どもたちの部屋を覗きに行くと、完全に双子たちに遊ばれている由羅がいた。
『あ、綾乃くん!ちょっと見てよ、あの兄の姿!も~おかしくって……』
莉奈が由羅を指差し爆笑する。
「あ、あやのちゃん!おきたの!?ねぇねぇ、あそぼ~!」
「あやのちゃん、ゲームしよ~!きょういちおじさんよわすぎ~!」
オレが部屋に入ってきたことに気付いた子どもたちが、一斉にこっちに群がって来た。
「綾乃、起きたのか」
「え?あぁ、さすがにな」
頭にリボンをつけられた由羅がオレを見て少しほっとした顔をする。
「あやのちゃん、ねすぎ~!」
「オレもこんなに寝る予定じゃなかったんだけどな」
「でもねてた~!」
「……だな。それよりお前ら由羅……響一叔父さんに遊んでもらってたんだろ?」
「おじさん、ぜんぜんあいてにならない」
「おままごともだめだめなの」
子どもたちから大ブーイングを受けて、由羅が若干ショックを受けた顔をする。
「こらこら、そんなこと言ってやるなって。叔父さんはあんまりこういう遊びしたことねぇんだよ。だからな、お前らが先生になって叔父さんに教えてやればいいんだよ」
「ぼくらがせんせい?」
先生という単語に反応したのは、長男の一路 だ。
面倒見がよく、しっかりものだが、一歳違いの朱羽 とはよくケンカになるらしい。
まぁ、ずっと良い子でいるのは疲れるし、そうやって素の状態でケンカできる相手がいるのはいいと思う。
「そうだよ。どうやって遊ぶのかちゃんと教えてやれ」
「はーい!じゃあ、おじさんきて~!おしえてあげるね!」
「え?いや、私は……というか、綾乃が来たからもういいだろう」
オレが来てようやく解放されると安心していたらしい由羅が、腕を引っ張ろうとする一路から逃げ腰になる。
「何言ってんだ。せっかく可愛い姪と甥が叔父さんを慕ってくれてんだから、ちゃんと相手してもらえ」
「……おい、綾乃……ちょっと面白がってないか?」
由羅が顔をしかめて若干頬をひくつかせた。
「そんなことはねぇよ?ほら、莉玖はこっちな~。オレと一緒にお姉ちゃんたちとおままごとしようぜ~」
はい、嘘です。めちゃくちゃ面白がってます。
だって、あの由羅が子どもと遊んでる!しかも振り回されて、タジタジになってるとか……面白過ぎるだろ!!
莉玖に対してはだいぶ表情が柔らかくなってきたけど、さすがにまだ杏里の子どもの相手は難しいらしい。
一路たちの勢いに押されて、ちょっと眉間の皺が深くなった気がする。
仕方ねぇなぁ……もう一声かけてやるか。
「由羅、莉玖だってすぐにこいつらみたいになるんだぜ?いろんな年齢の子どもの相手が出来るようになってた方が、後々役に立つぞ?」
「ぅ……それはそうかもしれないが……わかった。ゲームを教えてくれ」
「いいよ~!」
渋々ながらも、何とか子どもたちの中に入って行った由羅を見て、オレはなぜか“子どもの成長を喜ぶ母親の気分”を味わっていた。
***
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