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クリスマス 第46話

「ところで、もうすぐクリスマスなんだけど、どうする?」  風呂上り、由羅がオレの髪を乾かしたいと言ってきた。  莉玖の髪を乾かすのが苦手だから練習したいらしい。  苦手と言っても、莉玖はまだ髪が少ないからタオルドライでも十分乾く。  ただ、今は冬だし、莉玖も活発になってきて大人しくタオルドライさせてくれないので、オレがさっさとドライヤーで乾かしているのを見て、真似したいと思ったようだ。  いや、大抵オレが風呂入れてるんだから、別に由羅が練習する必要ないと思うけど……まぁ、今後のことを考えてってことかな?  普段は素っ裸のまま脱衣所で乾かしているが、今日は由羅の練習台になるために服を着てリビングのソファーに座った。  それにしても……由羅が不器用なのは知ってたけど……  うん、マジで下手だなコイツ……  それとも、さっきの仕返しか?  オレは自分の頭がボッサボサになっているのを感じつつ、適当に話題を振った。 「え?クリスマス?あぁ、そういえばそうだな。……どうするとは?」 「いや、だから……一応保育園ではクリスマス会とかがあって――……」  杏里にも聞いてはいたが、やはり由羅はクリスマスのイメージがあまりないようだ。 「サンタ……プレゼントか……」 「っつーかさ、クリスマスは子ども相手じゃなくても、恋人にもプレゼントを贈ったりするんだろ?お前今までの彼女とはどうやって過ごしてたんだよ?」 「向こうが欲しいというものをプレゼントしていたが……綾乃はどうしてたんだ?」 「オレ?う~ん、オレのガキの頃は……クリスマスは近所のガキ共と一緒に親から貰ったお小遣いでケーキとチキンを買って、みんなで分けて食ってたかな。プレゼントは寝てる間に親が枕元に置いてくれて――」 「……彼女とはどうやって過ごしてたんだ?」  オレが思い出に浸っていると、由羅が、オレの顔を覗き込んで来た。 「あのなぁ……オレが今その話題を華麗にスルーしたのわかんなかった?前に言ったよな?オレは!生まれてこの(かた)!彼女なんて!いたことねぇんだよっ!」  ムカついたので由羅のこめかみをグーで両側から挟み込んでグリグリする。 「こら綾乃、痛いじゃないか」  少し顔はしかめたが、全然痛がっているようには見えない顔で由羅がオレの手を掴んだ。 「痛くしてんだよっ!お前が余計なこと言うからっ!」 「わかったわかった。すまん、そういえば彼女はいないと言っていたな」  ぬわぁ~にを、たった今思い出しました~!みたいな顔してんだ!すっとぼけやがって!!  記憶力いいお前が忘れてるはずねぇだろっ!! 「あ~もう!そんなことどうでもいいんだよっ!それより、クリスマスしてもいいのか?」 「どうして私に聞くんだ?」 「そりゃ、やっぱり家庭の事情があるからな。保育園とかでは、全体の行事としてやるけど、各家庭での育児方針もあるだろうし?ほら、プレゼントはもう少し大きくなってからとか、うちではクリスマスはしませんとか……」 「私は自分がそういうのとは無縁だったからよくわからないな。綾乃はどう思う?した方がいいか?」 「う~ん……家庭の事情はどうあれ、まぁ、一応はしておいた方がいいかも?学校に行くようになったら、絶対子ども同士で話題になるだろうから……」  クリスマスプレゼントは、大人の都合でよく「いい子にしてたらサンタさんが来てくれる」と言い聞かせることがある。  そのせいで、クリスマスプレゼントをもらえない=悪い子、と思い込んでしまう子もいる。  自分だけじゃなくて、他人にもその考えを当てはめてしまうので、自然と偏見やいじめにつながることもある。  大人が思うよりも、子どもの世界は単純で残酷だ。 「プレゼントはさ、そんなに高価なものじゃなくてもいいんだよ。まぁ、とくに今はまだそういうのはわかんないんだし、プレゼントとかよりもクリスマスの雰囲気を味わうっていうか……」 「雰囲気……?」 「あ~……まぁ、クリスマスツリーとかはなくてもいいけど、う~ん、あ、ほら、お前が休みの日にイルミネーションを見に連れて行ってやるとかさ、今の時季の楽しい雰囲気が伝わればいいんじゃね?」 「……そうか。わかった」  ホントにわかってんのかな?  っていうか、クリスマスの制作をさせていいのかって聞きたかっただけなのに、いつのまにやら由羅家のクリスマスをどうするかって話になってるような……  まぁ、クリスマス自体はしてもいいって感じだから、クリスマスの制作いっぱい考えるか!  ちゃんとしたツリーとかはもうちょっと大きくなってからでいいと思うけど、その代わりに牛乳パックでツリー作ってやろうかな~……! 「綾乃?どこへ行く?」 「え?もう報告終わったから部屋に帰る!明日莉玖と作るクリスマスの制作の準備しておかないと!」 「そうか……」 「じゃ、おやすみ~!」  何となく由羅がしょんぼりした顔をしていたような気がしたが、クリスマスの制作で頭がいっぱいだったオレは意気揚々と部屋に戻った。 ***

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