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クリスマス 第49話
『それで……昨夜、兄と何があったの?』
「ブフォッ!?」
莉玖が午睡したので、キッチンでお茶を飲みながら晩飯の献立を考えていると、不意に莉奈が目の前に現れて聞いてきた。
「ゲホッゲホッ!?」
『ちょ、やだ、大丈夫!?ティッシュティッシュ!!』
「ゥエッ……ゲホッ!……」
咽 ていると、鼻からお茶が出て来た。
鼻の奥が痛い……
あ~……牛乳じゃなくて良かった……っつーか……
「急に現れんなよ!んでもって、オレが傍にいない時はちゃんと莉玖の傍についててくれよ!」
ティッシュで鼻をかみながら小声で莉奈に文句を言う。
莉奈が莉玖を見守ってくれているから、安心して目を離していられるのに……
リビングにお昼寝用の布団を敷いて寝かせているので、キッチンからでも常に視界には入れているし、数分置きに様子を見てはいる。
だが、莉奈がいるのといないのとでは気分的に全然違う。
いないならいないで、オレがもっと莉玖に神経を集中してなきゃだし。
『大丈夫よ~。ちゃんと莉玖も見てるわ。私、莉玖に憑 いてるせいか、ちょっとくらいなら離れてても莉玖の様子がわかるのよ。それにこの家の中くらいの範囲なら、一瞬で移動できちゃうし』
何とも便利なことで……
っていうか、お前今さりげなく憑いてるって言ったぞ……?
まぁ、守護霊も憑いてることには変わりないけど……
それにしても一瞬か~すげぇな~……ん?一瞬……?もしかして……
「な、なぁ……昨夜ってお前……オレの部屋に来た?」
『……え?い、行ってないわよ?』
莉奈が斜め上を見てちょっと誤魔化した。
「今の間はなんだよ!?」
『大丈夫よ~!中には入ってないわ。兄があなたの部屋に入って行ったのを見ただけよ!……で、なかなか帰ってこなかったから、何かあったのかな~?って思っただけよ』
何かあった?……お前の兄貴に襲われてましたけど!?
とか、言えるかああああああああああっ!!!
「コホン!あっそ……まぁその……ちょっと今日の制作についての話を……な……?」
オレがモゴモゴと言葉を濁すと、
『へぇ~~~?制作について……ねぇ?』
莉奈が疑いの目で覗き込んできた。
やめろぉ~!そんな目で見んなあああああ!!
っていうか、オレは昨夜のことは忘れたいんだよっ!!
せっかく記憶から抹消しかけてたのに、掘り返すなよぉおおお!!
「さぁ~て、晩飯何にしようかな~っと……」
『あ、ちょっと~!話逸らしたわね!?』
「逸らしてねぇよ!今ちゃんと答えただろっ!?はい、この話は終わり!!」
『もぅ!そんなに隠さなくてもいいのに!ねぇ、私が莉玖を見てるんだから、気にせずにもっと兄とイチャついてもいいのよ?』
「イチャついてねぇからっっっ!!」
イチャつくって何だよ!?由羅とオレは別に何でもねぇからっ!!
オレたちの関係は雇用関係!それ以上でもそれ以下でもねぇし!!
由羅の言動にも何にも意味なんて……ねぇし……
杏里さんにしても、莉奈にしても、オレと由羅を一体どうしたいんだ……!?
***
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